横須賀市政の転換期となった今年、激戦となった市長選を制したのは上地克明氏。停滞を打破すべく、改革プランを打ち出している。ウインドサーフィンW杯の開催や中高校生アスリートの活躍など、スポーツでの明るい話題も多かった2017年を紙面から振り返る。
市政
市長交代
「継続か刷新か」―市民の1票に委ねた6月の市長選。吉田雄人氏は昨年10月に出馬を表明、3月には当時市議だった上地克明氏が名乗りを上げた。割引を記載した名刺の配布問題が尾を引き、吉田氏は3選ならず、「横須賀復活」を掲げ、超党派で票を重ねた上地氏が新たな市政のかじ取り役となった。
上地市政では改革のスピードを重視。永妻和子氏と田中茂氏を副市長に任命、教育長には新倉聡氏が選ばれた。9月議会では、小児医療費の助成上限を中学3年生まで引き上げ。「横須賀ナンバー」については、アンケートを行ったが、賛成と反対が拮抗し「時期尚早」として見送る結果となった。
中学校給食導入に関しても動きがあった。7月に行われた総合教育会議で「センター方式」に決定。用地選定では10月に旧平作小学校が選ばれている。
生活のインフラ向上へ
「国や県との連携」を打ち出す上地市長は、9月に国土交通省に出向き国道357号延伸を要望。「早期着工に向けて手続きに入りたい」との回答を得た。11月には、関係する各機関による具体的な議論が始まっている。
県道の久里浜田浦線「衣笠工区」は9月末に開通。横須賀ICから久里浜港まで約10・4Kmがつながり、周辺道路の渋滞緩和などの効果が出ている。
施設適正化計画にも動きがあった。吉田前市長は2月、万代会館の廃止と市民活動サポートセンターの3階移転を撤回。上地市長は「施設配置適正化計画」を凍結し、新たなプラン作成の方針を打ち出している。
12月には4年に1度の事業見直しが行われ、160件の見直しや廃止が明らかになった。福祉分野の対象事業が多く、行財政改革を進める上地市政の手腕が問われている。
商業経済
地域活性化に動き
市内経済の停滞が憂慮される中、商業分野で新たな動きもあった。株式会社エイヴイ(平成町)は、神明町のくりはま花の国に隣接する土地を取得。現在は、店舗運営を含めた活用方法を検討中だという。
横須賀リサーチパークでは、敷地の一部をスーパー「食品館あおば」を運営するビッグライズホールディングス(横浜市)が取得した。大型複合商業施設を想定しており、開始時期やテナント構成については調整の段階で、工事着手は来夏以降の見通し。
久里浜港の事業用区画も開発が進んだ。1月に温浴施設と飲食店、3月には冷凍ケーキ工場が開業。7月には、宮崎県日向市へ「トライアル寄港」も実施した。同地区では民間事業者らが連携し、独自に同港を「ペリーふ頭」と名付けてPR。今月10日には「黒船朝市」と銘打ったイベントを開催し、1万人の集客があった。
さらに、市内での就業を活発化する動きもある。市は求人情報を集約したウェブサイト「ごきんじょぶ」を開設した。障害児の母親グループ「すかすかいっぽ」は横須賀商工会議所と連携した「テレワーク事業」を11月に開始。企業のアウトソーシング事業を担う。
老舗商店の店じまいが相次いだのも今年の特徴だった。レコード店や海軍カレー店、書店、日用品商店など、消費動向の変化や店舗の老朽化など、時代の波にのまれる形で惜しまれながら看板を下ろした。
後継者不足に悩む中小企業に対し、「事業承継」を支援する動きもあった。9月には、市が地域金融機関、商工会議所と連携し、経営セミナーを行っている。
「跡地」の利活用も注目された。横須賀警察署跡地では12階建てマンションの建設が進んでおり、三春町の救急医療センター跡地は、6月にカー用品販売などを手掛ける株式会社イエローハットが落札している。
商店街も次の一手
大型店進出や消費ニーズの多様化など、来街者の減少に頭を悩ませる市内の商店街でも、停滞を打破する取り組みがあった。5月には地域での役割や課題を議論する「商店街サミット」を開催。中央地区では飲食店主やクリエーターらが中心となり、11月に「Sunday Street」を実施。蚤の市をイメージした催しに若い世代が集まった。定期開催に向け、動き出している。
グルメイベント多彩に
地産地消をテーマにグルメイベントも多様な動きがあった。市では、市外からの誘客を狙い「スカメシ」と題したスタンプラリーを企画。上地市長自ら、横浜駅で周知活動を行った。
市内の飲食店では「三浦半島はイタリア半島」をテーマに、「よこすかピッツァブラック」「横須賀トマト鍋」を展開。地場産物の魅力発信に趣向を凝らした創作メニューが並んだ。
新施設で誘い込み
観光誘客において市内施設の積極投資も目立った。ソレイユの丘は4月、オートキャンプ場を開設。10月には観覧車や大型遊具を新設し、ファミリー客の取り込みを強化している。くりはま花の国も同様に3月、子ども向けの遊具エリアを新設。観音崎京急ホテルでは、6月に屋外キャンプ施設「グランピング」をオープン。高級感を前面に打ち出し、市外からの誘客に力を入れている。
スポーツ
津久井浜が世界の舞台
市内で行われた今年最大のスポーツ大会といえば、5月のウインドサーフィンW杯。世界クラスの選手たちが訪れ、津久井浜で風を受けた。地元では「ウィンドブルー」と名付けた商品開発で連携。街おこしの機運も高まった。大会は来年の開催も決まっている。
中高生の躍進
3月、都道府県対抗バスケットボール大会に出場した田中力くん(坂本中)は優勝に貢献し、全国MVPを獲得。史上最年少で日本代表候補にも選ばれた。近代五種では市内の高校生2人が7月の世界大会に出場。田浦中の栁川大樹くんは、国体と全国中学校水泳競技大会の背泳ぎなど数種目で優勝している。
三浦学苑サッカー部は、5月の関東大会県予選大会で優勝。県初制覇となった。同じくサッカーでは11月の全国高校選手権県2次予選で、三浦学苑と湘南学院が揃って準決勝に進出した。
7月に行われたワールドゲームズのフィールドアーチェリーでは、市内のガス会社に勤務する大貫渉さんが銅メダルを獲得。10月の国体でも県2連覇に貢献し五輪代表へ弾みをつけた。
文化
「横須賀らしさ」全面
市内で撮影が行われた”オール横須賀”の作品「スカブロ」が6月に市内の映画館で上映された。今後は、市外での展開やDVD化を目指すという。この劇中にも出てきた「スカジャン」での街おこしも活発化。市のPR動画作成や着用割引イベントのほか、小泉進次郎衆議院議員が着用したことから話題を呼んだ。
「里帰り」活動の開始から3年。船の科学館から移設した「陸奥主砲」のお披露目式が3月に行われた。4月には、旧軍港4市の「日本遺産」に記念艦三笠が新たに追加認定。これを受け、三笠ビル商店街入口には同艦の半立体パネルが登場している。
地域の歴史・文化発信
西逸見出身の児童文学作家で、2月に亡くなった佐藤さとるさんの作品に登場する「コロボックル」をテーマにした地域団体も立ち上がった。逸見地区では、三浦按針に関する冊子作成や大河ドラマ化に向けたPRなど活動が広がっている。
浦賀地区では奉行所300周年に向けた地域イベント「浦賀○おもてなしウィーク」を10月末から開催。西浦賀の奉行所跡地については11月、住友重機械工業から寄付の申し出があり、活用を検討していく方向。
社会・地域活動
子ども支援の輪広がる
海外での心臓移植を目指す森崎小2年生・岡崎雫ちゃんの支援活動が7月から始まった。チャリティーミュージカルや講演会、街頭での募金活動などを展開しており、今月中には3億1千万円の目標金額に達する見込みだという。
池上では、5月に常設の子ども見守り拠点「みちおやの家(現・よこすかなかながや)」が立ち上がり、ボランティアの支援を受けて活動を展開している。
空き家活用も多様
市内で増える谷戸の「空き家」の利活用が広がっている。ベーカリーやアートカフェとして展開する例もあり、立地や古さを持ち味にした取り組みが注目された。また、2月に行われた「まちづくり政策コンペ」では、大学生から空き家を使った二拠点居住の提案もあった。
汐入駅前に一風変わった”食堂”が登場したのは8月。外来生物を「食べて考えよう」と調理し提供した。店舗を立ち上げた天白牧夫さんは地元の里山再生事業を手掛けており、林にある「扇子畑」では農業と観光を繋ぐ「グリーンツーリズム」に乗り出している。
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