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横須賀版 公開:2018年1月1日 エリアトップへ

三浦半島民泊事情 課題解決の一手なるか

社会

公開:2018年1月1日

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日常の体験や滞在先の家族との交流がウリ。郷土料理は味わうだけでなく、作り方も学んでもらう
日常の体験や滞在先の家族との交流がウリ。郷土料理は味わうだけでなく、作り方も学んでもらう

 一般住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」に注目が集まっている。訪日外国人の増加が背景にあり、今年6月には普及を目的にした新法も施行されることで、今後受け皿として期待がかかる。旅館やホテルなど宿泊施設が限られる三浦半島でも、観光活性など地域の課題解決に結びつく可能性もあるが、一方、他の自治体では違法状態の民泊や近隣住民とのトラブルなど課題も多い。三浦半島4市1町の動向を調べた。

□  ■  □

 「観光面では有効になり得るが、トラブルの懸念もある。県と協議の上で、対応を見極めたい」と自治体の担当者は声をそろえる。

 タウンニュース社の調べでは、自治体としての「民泊」の推進に乗り出しているのは現状、横須賀市のみ。民間事業者と地域の取り組みを後押しする形で集客を進めている。一方、個人などの参入に関しては、届出のある宿泊施設以外は実態の把握が難しい。保健所がある同市を除いては独自規制をすることもできないため、残る3市1町については県や他の自治体の動向を注視するにとどまっているのが現状のようだ。

 観光庁の統計調査によると、神奈川県への外国人宿泊者数は増加傾向にあり、2016年はのべ216万人。県は新法施行に際して条例規制をするかの協議を重ねており、各自治体への聞き取りを通じて早ければ2月にも方針を固める。

 半島エリア内では、民泊に関する苦情やクレームは今のところ大きな問題にはなっていない。だが、外国人観光客に人気の高い鎌倉市では、ごみや騒音に関するもので15年度は2件だったのに対し、16年度は6件、17年度は15件と急増。ごみの分別の細分化を進める葉山町でも昨年1件の苦情があった。町の担当者は「ルールが細かく、外国人に周知できるかは今後の課題。管理会社に対して、積極的に情報を発信したい」と話す。

 一方で、20年東京五輪を見据えた民泊活用の期待感も広がる。

 葉山町では昨年、セーリング英国代表が、鎌倉市では仏国代表がそれぞれ事前合宿で滞在。今後さらなる需要も考えられるが、受け入れには宿泊施設が限られる現状があり、長期宿泊先としての可能性を模索していくという。

横須賀

修学旅行生に的を絞って

 一次産業が盛んな長井地区では、地域全体で修学旅行生を呼び込むユニークな試みが成果を上げている。一般家庭が宿泊先を提供し、農漁業などの体験プログラムを用意。ホームステイ感覚で郷土料理や文化にも触れてもらっている。旅行会社のJTBと地元町内会、横須賀市の3者が連携して2014年に事業化。初年度は2校167人、昨年度と今年度は年間で1500人超の中高生が訪れている。東南アジアを中心に海外の生徒の受け入れも積極的に行っており、昨秋はミスインターナショナルに出場する各国の代表が漁師や農家の家に寝泊まりしたことで話題を呼んだ。今後は海外の学校と市内の中・高との異文化交流も体験メニューに加えていくという。現在は佐島地区などにも広がりを見せており、「横須賀西海岸民泊」となっている。

逗子

小坪の価値、見直す契機に

 のどかな風景が広がる小坪漁港。かつては漁業を主力にその賑わいが「小坪千軒」と称され隆盛したというが、近年は水産業者の減少や空き家の増加などの課題を抱えている。

 そんな過日の賑わいに再び光を当て、魅力を創出しようという構想が民間レベルで検討されている。10年先のまちづくりを考える市商工会「ネクスト10推進委員会」ではそのプロジェクトの一つとして、訪問者に魅力を体感してもらう「カジュアルステイ(民泊)」を発案。獲れたての魚や昔ながらの街並み、人情味あふれる風土は「地方色や民族文化を求める外国人観光客にも好まれる」と考えた。例えば使われなくなった古民家も、有効活用すれば新たな地域資源になる。現状は構想段階だが、地元漁師や飲食店主らが具体化への話し合いを進めており、「小坪の価値”再創”に向けた可能性」を模索している。

鎌倉

五輪合宿の受け皿に

 鎌倉市は第3期観光基本計画で「泊まる観光」の推進を掲げており、税金の軽減措置を設けて宿泊施設の立地促進を図っているほか、「民泊」の活用も検討を始めている。

 大手民泊仲介サイト「エアービーアンドビー」で「鎌倉市」と検索すると、700件以上の物件がヒット。市は「いわゆるヤミ民泊については現状を把握していない」とするが、「民泊新法」の施行に合わせ、県と連携して相談窓口を設置するなど対応していく考えだ。

 そんななか、東京五輪セーリング競技の会場となる江の島で、18〜20年まで3度、大会も開催されることから、選手の滞在先に一般住宅を使った「ホームステイ型民泊」を提供できないか、検討が進んでいる。

 すでに仏国セーリングチームが市内に滞在して練習を積んでおり、長期滞在できる場所の要望が寄せられているという。昨年10月には同チームの選手約20人が市内の保育園を訪れ、園児たちと交流した。市は「国際交流の良い機会にもなる。実現の可能性を探っていきたい」としている。

 民泊...旅行者に有料で住宅を貸す宿泊サービス。旅館やホテルより比較的安価に日本の生活を体験でき、主に外国人観光客に人気がある。現状では旅館業法に基づく「簡易宿所」として、許可を得る必要がある。今年6月の「住宅宿泊事業法」施行後は、住宅専用地域でも届出によって年間180日を上限に営業が可能になる。都道府県や政令市などは住環境の悪化が懸念される場合、独自に制限を加えることができる。
 

小坪漁港の風景。江戸中期には「小坪千軒」と称され、隆盛を誇った
小坪漁港の風景。江戸中期には「小坪千軒」と称され、隆盛を誇った
選手たちと交流する園児たち(鎌倉市提供)
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