今月24日に舞台に立つ市民劇団「浜の隠居の会」で脚本を手掛けた 木村 紀夫さん 日の出町在住 77歳
尽きない「書きたい欲求」
○…「人前に立つピリッとした感覚がたまらない。出番は少しだけど」。旧知の友人と75歳で立ち上げた劇団の2年ぶり2回目の公演を間近に控える。前作に続いて脚本を担当。幕末の浦賀を舞台に、元岡っ引きが事件解決に駆け回るドタバタ喜劇の続編を新たに書き下ろした。すれ違いや勘違いを見事な笑いに昇華させる緻密なストーリーが見もの。「肩肘張らずに誰もが笑って楽しめる」と自信の表情を浮かべた。
○…浦賀に材を取る理由は、歴史の表舞台に登場する豊富なエピソードがあるからだけではない。5歳で他界した父に手を引かれ、浦賀駅に降り立った幼少期の記憶が今も脳裏に焼き付いている。「(浦賀駅にやって来ると)不思議と手が温かくなる」。自分にとっての特別な場所を舞台にするのは、深層心理にある父への哀悼表現かもしれない。
○…横須賀市役所を定年まで勤めあげた。新しい人生は本の執筆と趣味の落語に捧げると決め、生活の中心に置いてきた。江戸落語の創始者である初代・三笑亭可楽を徹底的に調べ上げ、芸への執念と波乱に満ちた生涯に迫る長編小説を平河半蔵のペンネームで大手出版社から上梓したのが14年前。今も新作を書き続けているなど執筆の手を止めない。先ごろ完成させたのは、江戸を舞台にホラー的要素を取り入れた時代小説。発表の機会を得たいと、出版社のコンテストなどに投稿している。
○…作家として、創作のアイデアを絶えず求めている。目に留まったのが、江戸文化の研究科である三田村鳶魚(えんぎょ)の文献。この中の記述で江戸時代の銭湯は男女混浴が当たり前だったことを知った。そこから夢想する人情物語─。「書きたい欲求」は尽きることがない。スルスルとペンが走り出す。
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