震災発生から5日後、仙台から石巻など被災地沿岸を訪れた。「空気やにおい、今まで感じたことのないものだった」と話すのは千葉理恵子さん。想像を絶する状況を目の当たりにして、言葉がなかった。
現地入りの目的はカウンセリング。「気持ちを軽くすることが私の役割。心のデトックスに、という思いでいっぱいだった」。現実を受け止めきれない人、気丈にふるまう人―。「話をして、やっと涙が出た」「ようやく眠れた」。必死に生きようとする姿に触れて、「人間の強さや優しさを気付かせてもらった」と振り返る。同時に「これをこれからの人生で伝えていかなければ」―使命感に駆られた。
「海を好きになって」
「震災は海の大好きな子どもたちの大切なものを持って行ってしまった。再び海を好きになってほしい。そして人に寄り添う大切さを感じてほしい」。長く伝え続けるために、絵本を作りたい。被災地を訪れて1年ほど過ぎてから、自分で書きとめていた。人を介して知り合った絵本作家の永井みさえさん(藤沢市出身)に絵を依頼。そうして昨年1月に完成したのが「にじいるか」だ。
虹色の尾びれを持ったいるか「ひーはん」が海の仲間のコミュニケーションを取り持ち、貝の「なおくん」の笑顔をつないでいくストーリー。副題は「キャリアコンサルタントがおくるこころあたたまるものがたり」。いるかを主人公に据えたのは、千葉さん家族の思い出のひとつでもあったから。末娘が幼い頃に「虹色のいるか」の話を創作していたことに加え、セラピー効果も大事な要素。英語の対話付きで、カウンセリングの技法や色彩心理学の知識を取り入れた。
学資資金に寄付
本業は、ソフトウェア開発やパソコンサポートなどIC関連を専門とする株式会社ティー・エム・シー(追浜本町)の専務取締役。経営者かつ働く女性としての岐路にあった40歳の時、大学に入り直し、性格心理学や認知行動療法を学んだ。人の適性や性格を理論で理解する―。経験を積んで、2級キャリア技能士やキャリアコンサルタント、産業カウンセラー等の資格を取得。これが被災地と自分をつないだ。
絵本の収益は、被災者の学資資金に寄付している。毎年3月11日前後に現地に足を運び、カウンセリングで関わった子どもたちに直接会いに行く。今年も今月末に訪れる予定だ。「心の支えは人にしかできない」。思いを込めた絵本を手に、そう力強く語った。
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