太田和の特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で施設長を務める若山三千彦さんの著書「看取り犬 文福の奇跡」が大きな反響を呼んでいる。先月18日の発刊以降、アマゾンや楽天ランキングで1位になるなど話題。特養で初めて、犬や猫と共生できる「伴侶動物福祉」に取り組んでいる同施設での心温まる実話が綴られた一冊だ。
作品の舞台となる同施設は2012年に開所し、愛犬や愛猫と一緒に過ごせる全国初の特別養護老人施設として話題となった。取り組み開始から7年経った今でも全国の福祉関係者などが度々視察に訪れ、注目を集め続けているという。
特養入居対象者である要介護度3以上の人で独り身の人は、現状では施設に入居する際にペットを手放すのが一般的。若山さんによると、ペットとの共生に取り組み始めたきっかけはここにある。
理事長を務める社会福祉法人心の会(本部・小矢部)が同施設を開く以前のこと。別施設で高齢者が入居する際にペットを保健所に引き取られ、そのことに対して「自分が家族を殺した」と自責の念に駆られ、生きる気力を失って半年後に亡くなった話を知った。この出来事に大きなショックを受けた若山さん。「福祉の在り方の過ち」と気づかされ、一石を投じようと一念発起してペットと共に暮らせる場の創設を決意した。
著書では元は保健所から来た保護犬で、今は看取り犬として入居者に愛されるオスの雑種「文福」をはじめ、犬たちのリーダー「大喜(だいき)」や飼い主である入居者に寄り添い献身的に支える忠猫「祐介」、保護猫出身で右前足が曲がっているが気にせず飛び回る元気な「タイガ」などが主人公。いつもは元気いっぱいだが、入居者に近づく最期をいち早く感じ取り、その人に片時も離れず寄り添って看取り、悲しそうな表情をみせる「文福」。海に捨てられるところを偶然救われ、新たな飼い主が自身の死後への心配から拒食症で生死を彷徨ったものの、縁あってさくらの里へ入居でき、元気を取り戻した「祐介」との話。こうした15のエピソードが収録されている。
若山さんは著書を通じ、「人とペットの絆、ペットと高齢者の間にこうした切実な事情があること、介護が必要な人でも愛犬や愛猫と終末を迎えられる選択肢がこうしてあることを広く知ってもらいたい」と話す。また「我々のような取り組みを行う施設が他にも増えてありふれた存在になり、人とペットがいつまでも一緒に暮らせる社会の実現に繋がってほしい」と訴える。
B6判220ページ。東邦出版から税別1389円。市内では文教堂やくまざわ書店で取り扱い。
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