新型コロナの収束が見えず、多くの事業者が不安を募らせている中で、地域経済を支える信用金庫が存在感を示している。「かながわ信用金庫」は、緊急融資や経営サポートに乗り出し、窮地に陥りそうな中小零細企業を盛り立てた。これにより金庫自身も増収増益を確保。貸出も大きく伸ばし、「強くてやさしい」のスローガンを体現した。平松廣司理事長=写真=にコロナ禍の経済再生と新しい年の経営方針を聞いた。
──地域経済の状況をどう見ていますか。
「業種による濃淡はありますが、大きなダメージを受けていることは間違いないでしょう。ただ、政府のコロナ対策関連貸融資や横須賀市が講じた家賃支援などが功を奏し、一定の落ち着きを見せている印象です。コロナ禍が過ぎ去った後は、社会全体の仕組みが大きく変わっていることが予想できます。ビジネスモデルの転換も迫られるでしょう。合理化やデジタル化が必須となりますが、中小企業はこうした波に乗り遅れがち。コロナ後に厳しい局面を迎えることを想定しながら、取引先に寄り添う『伴走型支援』をより強めていく覚悟です」
──コロナを引き金に閉店する店舗が目立ち始めています。衝撃的な出来事として、老舗デパートのさいか屋横須賀店の閉店発表がありました。
「横須賀中央の経済を大きく揺さぶるもので、周囲への影響を危惧しましたが、継続の意思が示され胸をなでおろしました。さいか屋は横須賀の顔であるべき存在です。新店の独自の頑張りに期待するだけでなく、横須賀の経済界をあげて支援していく必要があります。商店街や市民を巻き込んで、市全体で応援ムードを醸成したいと考えています」
新成長戦略に「農業ビジネス」
──コロナの収束が予測できない現状下で、これまで重点的に取り組んできた観光振興とは別の経済戦略が必要ではないでしょうか。
「コロナの感染拡大で『人命と経済』の選択が問われましたが、両者のバランスを取るしかない、というのが私の考えです。横須賀でどうするか─。これが命題であり、ひとつの方策として農業に焦点を当てた取り組みをスタートさせます。私が会頭を務める横須賀商工会議所では、マーケットセンスを持った新時代の農業従事者を育成する『産農人』プロジェクトを3年前に立ち上げ、一定の成果を上げています。三浦初声高校都市農業科の生徒らが、地元の若手農家や加工業者などから指導を受け、6次産業化に挑んでいます。これを発展させ、経済と農業の結びつきをより深めた産業モデルの創出をめざします。農業法人を立ち上げて、農家以外の方でも就農できる受け皿を用意し、農業経営を学んでもらう考えです。将来的にはこれを移住・定住にも繋げていく展望を持っており、県の応援制度も活用して戦略的に進めます」
渋沢栄一研究家として伝承も
──平松理事長は、渋沢栄一の研究家としても知られています。今年は大河ドラマの放送があり、渋沢の功績や人物像が注目を集めそうです。
「『日本資本主義の父』と称され、みずほ銀行、東京海上、帝国ホテルなど500もの企業設立に携わった社会起業家です。代表著作に道徳と経済の融合を説いた『論語と算盤』があります。渋沢の理念がなぜ今求められているのか、機会を設けて話したいと思っています」
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