けがや病気で視力を失った犬を障害となる壁などへの接触から守る「ドッグバンパー」という補助具がある。開発者は、秋谷で3D技術を用いたモノづくり事業を展開するAtomic Works社の西澤洋さん。「盲犬に不安なく歩いてもらえれば」と話す。
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幼い頃から大の犬好きだった西澤さん。以前、自宅で飼っていたパグが角膜潰瘍になり、晩年は目が見えなくなった。頭を撫でる微かな感触にも怯え、壁にぶつかる度に痛々しい悲鳴が聞こえた。「胸が絞めつけられるようだった」。元々は活発な性格だった飼い犬はすっかり動かなくなり、2015年にこの世を去った。「私にできる支えはなかったのか」と自問自答を繰り返した。
心にしこりを残したまま過ごしていた翌年末、一つのアイデアがひらめいた。犬が障害物に近づくと頭部を覆ったリングがガードし、接触する前の緩衝材となる仕組み。人間でいえば視覚障害者の白杖の役割を果たすものだ。ネットを調べると海外の既製品は出回っていたが、個体別にフィットする商品はなかった。
工業製品のエンジニア経験を活かし、すぐに商品開発を開始。3Dプリンターを駆使し、半年後に納得のいく器具が完成した。犬への負担を最小限に抑えるため、素材にはトウモロコシ樹脂を使い、重さは100g以下と軽量。ホームページを見た飼い主から注文が入り、これまで約300個をオーダーメイドで製作した。「自信がついて走れるようになった」など喜びの声も寄せられた。
デザイン性にもこだわり、妻の千鶴さんと共に今も改良を重ねる。白内障で全盲になったもう1匹の愛犬・ヘソ君に装着し、出来栄えを確認する。「ワンちゃんと飼い主さんの精神的な安心につなげたい」。瞳の奥にある思いを感じ取るかのように、ヘソ君はじっと主人の声に耳を傾けた。
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