かつて「榎戸湊(えのきどみなと)」と呼ばれ、海上交通の要所、漁港として栄えていた深浦湾。「良質な漁場を多くの人に知ってもらいたい」と地元の飲食店が漁師と連携してメニューを開発、追浜の2店舗でアサリを使った「深浦丼」のほか、「アカモク丼」の提供を始めている。
アサリ・アカモクを丼に
鎌倉時代は交通の要所、江戸時代には東京湾内の商港・漁港として賑わっていた深浦の港。当時は魚問屋もあり、市内でも有数の「漁業の町」だった。現在は、横須賀市東部漁協の田浦出張所に所属し、操業するのは10隻ほど。その規模は一時期に比べると縮小している。
メニューの開発は、追浜の地理や歴史を学ぶ地域団体「おっぱまはっけん倶楽部」のメンバーが、「地元の食材の魅力を発信できないか」と飲食店主の齋藤仁克さん(追浜本町/寿徳庵)、下澤敏也さん(追浜町/うれしたのし屋)らに声をかけたことがきっかけ。深浦漁港の漁師、内山義治さんもこの意に賛同。昨年秋に商店街内の複数の店舗による販路開拓や新製品開発などへの国の補助金「地域・まちなか商業活性化支援事業」の採択を受け、「三浦半島の漁港・農家をつなぐ商店街・新食文化発掘プロジェクト」を立ち上げた。
「旨みの濃さ」特徴
深浦湾はマコガレイやカマス・タチウオ・アナゴ・ブリなど豊富な種類が獲れる良質の漁場。水揚げ後は漁協などに出荷するため、地元で「深浦産」を食する機会は少ないという。
そのなかで狙いをつけたのがアサリ。「甲高で厚みがあり、ふっくらしているのが特徴。なによりも旨味が濃い」と内山さんは話す。知る人ぞ知る深浦の名産品で、機械掘りできない場所のため、手掘りで1日の収穫量は30kgが限度という貴重なもの。獲れるのは6月から8月の短い期間だが、冷凍での長期保存も可能だという。出汁まで美味しく食べられるよう地卵でとじるメニューを提案し、「深浦丼」と名付けた。これと「アカモク丼」を地元名産としてPRしていく。現状では2店舗での取り扱いで、供給量に限りがあるが、将来的には通年での提供を目指している。
食で賑やかに
地元育ちで異業種から漁師に転身した内山さんは「自分の獲ったものを身近な場所で食してもらう機会ができて嬉しい。港の名前が付いたメニューで、追浜の町が賑やかになれば」と期待する。同地域では、横浜DeNAベイスターズの2軍拠点集約事業も進んでおり、商店街も活性化に知恵を凝らしている。齋藤さんは「こうした動きに合わせて店舗や団体が連携し、追浜の美味しい食材をPRできれば」と意気込みを話した。
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