設備や選手層に恵まれた強豪私立校を、環境面では及ばない公立校が打破する。それは過酷な夏を戦う公立勢の選手にとって、念願のテーマでもある。
「旋風再来」。選手たちが胸に刻むのは３年前の秋、先輩たちが成し遂げた快挙だ。わずか13人の部員ながら強豪ひしめく県大会で８強まで駆け上がり、一躍注目校に躍り出た。「人数が少なくて目立った選手はいなくても、相手に気圧されない雰囲気があった」。当時中学生で、スタンドから試合を見つめていた主将の勝又裕覚（３年）は振り返る。今年チームの精神的支柱で、捕手として守備の要でもある勝又は、憧れたその姿が勝ち星をつかむための鍵と考えている。
幸か不幸か、この１年、公式戦で名だたる強豪校と当たってきた。昨秋は県大会を制した平塚学園と３回戦で激突。結果は大敗を喫したが、そこで大きな糧を得た。「強いチームは選手層だけでなく、力を発揮するための雰囲気作りができていた。これができなくては勝てない」。その後、「笑顔・全力疾走・大声援・拍手」の４つを合言葉に練習や試合に注力。春の県大会では２回戦で名門、桐光学園と当たったが、終盤まで２点差の接戦を演じた。「戦ってみて、そこまでの力の差は感じなかった」。手応えは、取り組んできたことが結実しつつある証でもある。今夏は初戦を突破できれば、２回戦で第２シードの慶応と対戦する。「１年からベンチ入りをさせてもらって先輩たちが戦う姿を見てきた。今度は自分たちの番。勝って上を目指したい」。戦いを前に気後れはない。
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