紅茶を使った柿コンポートのタルトや、スダチとホワイトチョコのムースにスイートポテトクッキー。季節を感じる本格派のスイーツがずらりと並ぶ。まるで洋菓子店と錯覚してしまいそうだが、ここは初声町下宮田の「ケアホーム三浦」という名の介護老人福祉施設だ。今年6月の開所以降、毎月、デイサービス利用者向けのおやつとして、元パティシエが手づくりするユニークな「デザートビュッフェ」を行っている。
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午後3時を回り、色とりどりのスイーツがフロアに運ばれてくると目を輝かせ、どれを食べようか思案する利用者たち。「手間暇かけてもらってありがたい。美味しいので、いつも楽しみにしているんです」
これらを手掛けるのは、同施設で調理師の日下政弘さん(同町在住)。20年以上にわたり、横浜市内のホテルでウエディングケーキや細工菓子を作っていた元パティシエという異色の経歴の持ち主だ。ホテル退職後は、仲間たちからの誘いを断り、介護業界へ。挑戦の道を選んだ。これまで病院や有料老人ホームでの勤務経験はあるが、いずれも食事の調理業務が主な仕事内容。菓子作りからは遠ざかっていた最中、転職先だった「ケアホーム三浦」で、パティシエとしての腕を買われ、デイサービスのおやつも担当することに。「今までの技術を活かせる喜びが大きい。食べてもらう相手は変わっても、やりがいは変わりません」。聞けば、残食は毎回ほぼゼロ。「これ以上嬉しいことはないですよね」と満面の笑みを浮かべる。
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高齢者に提供するデザートというと、嚥下のいいゼリーやババロアなどが一般的。しかし、日下さんは食べる楽しみを引き出そうと、旬、盛り付け、食感、手づくりにこだわった多彩なスイーツを用意する。そんな細やかな配慮は「単に栄養を補給するだけでなく、食べる楽しみが生きがいや明日への活力になる」との思いから。
現在は指導役として同僚調理師らに菓子作りのノウハウを指南。「『自分もやってみたい』と思ってもらうことで、『より美味しいものを作りたい』という職場の士気も高まった」とやりがいを語った。
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