三浦版 掲載号:2018年1月1日号 エリアトップへ

座談会 私が三浦に暮らすワケ

社会

掲載号:2018年1月1日号

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 人口減少や少子高齢化、地域経済の低迷、財政健全化などまちづくりの転換期にある三浦市。近年、地元有志が移住支援を行う市民グループ「ミサキステイル」を発足。三浦暮らしに惹かれた移住希望者も増加傾向にあるなど、草の根からにわかに活気を帯びている。この街に暮らす魅力や発展への課題とは。それぞれの視点から語ってもらった。

浅葉 三崎で生まれ育ち、親父の跡を継いでペンキ屋をやっている。ほとんど三浦から出たことはなく、良さも不便さも慣れてしまっており、何が好きでこの街に移住するのか興味がある。

菊地 三浦出身。仕事は地方公務員の非常勤職員。大学では建築を学び、ランドスケープや造園、まちづくりなどを研究した。

ミネ 三崎下町商店街の旧米山船具店を事務所に、夫婦で出版社を営んでいる。横浜の生まれで、高校卒業後は美容師に。出版社勤務などを経て、東京から鎌倉逗子へ移り住んだ。ちょうど引越しを考えていたところ、三浦を案内してもらう機会があり、物件や街の良さを知った。

岩野 浅葉さんと同じく日の出の漁師の生まれ。これまで製造業や漁師の職に就き、不動産会社にも勤務していたが、昨年独立。以前は商店街がシャッター街になりつつあったので、そのまま衰退すると思っていたが、三浦の物件を知るうち、意外といい所だと再認識した。

官民連携で移住支援

―浅葉さん、岩野さん、菊地さんは市民グループ「ミサキステイル」のメンバー。

菊地 滞在する「ステイ」と様式をさす「スタイル」を掛け合わせた造語。私個人、観光だけでなくリアルな三浦を知る機会がないかずっと考えていた。大学卒業後から少しずつ三崎下町と関わるようになり、街を盛り上げたいという浅葉さんや岩野さんなど地元の人と出会った。今なら形にできるのではと思い発足。行政が出来ないことを市民がやろうと決めた。今は市と事業提携する東京R不動産から委託を受け、トライアルステイ(お試し居住)のサポートや移住相談所がおもな活動。フェイスブックにページを作り、移住意思がある人に対し自主的に情報発信も行っている。

浅葉 私は市役所との調整をするパイプ役。

岩野 私は物件紹介や不動産に関する情報を提供している。

―移住者から見て、こうした取り組みをどう思うか。

ミネ 移住促進は全国自治体の課題だが、市民や民間が能動的にシティプロモーションすることはとても良い。引越しする際、地域とのパイプがなければ腰が重い。ただの物件紹介だけでなく、地元商店主などの話しを聞き、コミュニティーを作り、移住する。そうした日々の橋渡しは、行政ではできないと思う。

決め手は「人」

ミネ いい人に出会い、いい街を知ることが移住の理由になるのではないか。正直なところ、長井から南はあまり来たことがなく、真鶴町や二宮町で探していたが、人との出会いが三浦との出会いだった。

浅葉 個人的には不便を楽しめない人は、三崎に来なくてもいいと思っている。街にはもともとの雰囲気や人の持ち味があって、そういう意味では閉鎖的でも構わない。頼んだら物がすぐに届くとか、手の届くところにほしいとか。昔は不便の中で暮らしていたし、むしろそれこそ人間らしい生活。自分も人との繋がりは面倒くさがりがちだが、その方がやっぱり面白い。

岩野 少し前は三浦でも都市化をめざす動きがあったが、今は違う。物件の前に坂があっても、たとえば桜や夕陽がきれいだったり。「プラスα」があれば、そんな生活スタイルもいいという人が増えている。

菊地 三浦の中でも少しずつ移住への考え方が変わってきている。とくに下町地区は昔からの漁師が多く、余所者に対してシャイな部分がある。しかし、最近では外から来た人が店を開くなど新しいものを受け入れる器が整ってきたと思う。入りやすい環境になってきたのでは。

ミネ 向ヶ崎町に越して、近所へあいさつに行ったらほとんどがおばあちゃんで。最初は「なんで越してきたの?」と言われたが、否定されるでもなく、ようこそでもない。いい距離感。

潜在価値に注目

岩野 私からすれば、割高な物件でも外から見たら「広くて安い」と言われる。東京・横浜・川崎と比べて破格。

ミネ コストパフォーマンスが良く、文化や自然もある。東京とも付き合える距離の”偏差値の高い街”。まだあまり知られていないだけで、そろそろ三浦の良さがバレるんじゃないかと思っている。そもそも移住という言葉は重い。ぼくの場合は半島内での引越しでしかないが、周囲は「三崎に行ったの?」と驚く。8年前、東京から鎌倉逗子に引越すと言った時も同じ反応だった。「今では鎌倉逗子に住んでいる」と言うとイイネとなる。移住というと人生の一大事みたいだが、都内まで1時間の場所。

菊地 その他の魅力で言えば食。野菜や魚をもらうことが多く、飲食店も外れがない。私は祖母から切り干しや寒天などの料理を教えてもらっており、次世代に伝えたいと思う。あとは、夕焼けなど風景もきれい。同じ場所から見ても毎日表情が違う。

課題はPR不足

―反対に三浦への改善や要望、不足している点は。

岩野 アピールの仕方。「いい所はあまりない」と言う人もいるが、外から見ると三浦独特の良さはたくさんある。地元の人は昔から見慣れていて、アピールをしようとせず勿体ない。うまくブランディングすれば、もっと人を呼び、知ってもらえる。

浅葉 ずっと住んでいるからこそ、足りないものを足りないと思ったことがないのは事実。

ミネ 民間と行政を分けて考えることはナンセンス。行政が民間的に、民間が行政のようなことをしなければ。ぼくが「三崎最高だよ」と勝手に言うこともシティプロモーション。分け隔てなく全員がプレーヤーになり、盛り上げる当事者意識を持つべき。

浅葉 私たちがトライアルステイ事業に関わる理由はそこにある。「行政がやってくれない」ではダメ。

菊地 (20〜30代の)同年代が仕事や結婚で市外へ転出してしまう。分娩を取扱う産科も昨年休診してしまった。今、出産を控えた友人が実家に里帰りしているが、横須賀に行かなければならない現状。市は「人口増加を」と言うが、その割には不便になっている印象がある。

浅葉 交通面では三崎口・三崎港発のそれぞれの終バスが早い。これでは観光客の滞在時間を延ばせない。

岩野 逆に終電で帰ってきてもバスがなく、都内で遅くまで働く人には大変。改善できれば、三浦を一度出た人も戻ってきやすいのではないか。

―今後の展望は。

ミネ 出版社としては、三崎の本を作ってプロモーションができたら。市内には新刊書店が3軒しかなく、三浦唯一の出版社と一緒に商売できる仕組みを作りたい。若い子にもいい本と出会ってもらえたら。

菊地 どの時季の三浦も知ってほしいとの思いから、1年中お試し居住できる場を用意することが、ミサキステイルの目標。

岩野 三浦に来る人はミネさんのように、何かを表現、発信したいという人が多く、もっと増えれば自ずと良さは気付かれる。その架け橋となりたい。

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