時代は平成から令和へ。
「代替わり」に焦点を当て、未来へのバトンを託された2人の継承者に仕事のやりがいや経営者としての手腕、事業承継の気構えなどについてインタビューしました。
三浦で連綿と受け継がれる地元企業の今とは―。
人を写し、記憶を残す
1909年創業の「三上写真館」は、今年110周年を迎える老舗。曽祖父の代から三崎下町にスタジオを構え、現在は4代目の三上悟さん(43)が暖簾を守っている。
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小学生の頃から荷物運びなどで父の仕事を手伝いながら、その背中を見てきた。「自然と同じ道を進むのだと思っていた」。高校卒業後、専門学校へ進学。3年間、写真の基礎を学んだ。
「写真の楽しさを教わった」。転機は趣味のサーフィンを通じて出会った日本人カメラマンのすすめで単身ニュージーランドへ渡り、半年を過ごしたこと。カメラとサーフボードを持って海に通っては、日の出や夕日などを撮影。雄大な景色、自然体でいられるライフスタイルに魅了され、帰国後もさまざまな国を訪れては、写真を撮りためてきたという。
喜ぶ顔が励み
先代からバトンを託されたのは、10年ほど前。「家族がひとつになる、あたたかな瞬間を撮る」を信条に、お宮参り、七五三、入園から卒業、成人式、結婚式などの記念日を写すことを生業にする。父から継いだ晴れ着に身を包み、節句を祝われる男児。大人の仲間入りを果たし、まだやんちゃな笑顔を見せながら友人と写る新成人。それぞれの人生の節目をともに喜びながら日々、シャッターを切る。
今、この瞬間しかない表情を収める独特の緊張感はあるが、写真を受け取りにきた客の嬉しそうな顔が何よりのやりがいになっているという。「とても可愛い。よく撮れてる」。我が子の晴れ姿に目を細める両親や祖父母を想像し、「『早く見せたい』と思いながら現像している」と明かす。
写真が家族の歴史をつむぐ、それは自身も同じ。箱の中から曽祖父が撮影したという写真の束を手に取って、まじまじと見つめる。時代は昭和初期。裏面には東京湾要塞司令部の許可済印と氏名、撮影地が記され、当時の統制の厳しさを感じさせるが、そこに写る人々はいきいきと笑っている。その仕事ぶりに「とてもカメラの上手な人だったと思う」としのんだ。
ライダー写真に商機
今年の春から新しい試みに挑戦する。市内各所の絶景を背景に、ライダーと愛車のバイクの記念写真を収める、その名も「ライダー写真in三崎」。バイク好きの知人から「自分が乗っている写真が欲しい」との声がきっかけだったという。若い頃、バイク乗りだったこともあり、深く共感。早速、夕暮れの三崎港や富士山を望む農道で試しに撮影したところ、出来栄えは上々だった。
新たなサービスとして打ち出したばかりだが、三浦市には多くのツーリング客が訪れており、潜在的なニーズはあるとにらむ。「プリント・額装することで、思い出とともに三浦の風景も長く残るのでは」
大手企業の台頭や記念写真を撮影する習慣の衰退、カメラの性能向上など、業界を取り巻く環境は変化するが、地域に寄り添いながら“町の写真館”としての使命を果たしていく。
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