帆布をベースに異なる素材を組み合わせた布小物のブランド「ギャザーバリーズ」。木村初美さんは、ハンドメイドならではの温かみと丁寧な縫製、遊び心が光るポーチやバッグなどの製造販売を手掛ける。
結婚後、4年暮らした横浜市金沢区から夫の祖父母宅がある毘沙門へ移り住んだ。伊勢原市の自然豊かな地域で生まれ育ったためか、横浜での生活は漠然とした物足りなさやアパート暮らしでの子育てに不安を抱えていた。「人間関係が希薄で、あのままだったら忙しないワンオペ育児だった」。家庭事情での引っ越しということもあり、慣れない土地に戸惑いもあったが、「星がとてもきれいで伊勢原の夜空と同じ。それが何より安心した」と懐かしむ。それから13年。買い物や送り迎えには車が欠かせず、「元気でないと住みにくさを感じる時もある」とこぼしながらも、「最近はよその子の成長が、うちの子と同じくらい嬉しい」と目を細めた。
また、元来の面倒見の良さから新たな移住者の良き“姉貴分”となり、相談に乗ることもしばしば。経験則上、良好な人間関係を築くには「土地の人と同じ物を食べるのが一番」と快活に笑ってみせた。
幼い頃から好きだったミシンは、今や人生の相棒だ。かつて勤務していたカーテン製造会社で工業用ミシンの扱いや縫製の基礎、布の知識を一通り叩き込み、出産後は趣味で子どものために服を仕立て、インターネット販売を行ったこともあったという。
「ギャザーバリーズ」を立ち上げてからは、下町商店街のシェア型ショップ「ミサキファクトリー@(アット)」内に店舗を置き、工房では自社製品以外に外注の縫製作業も請け負う。経営者として思い描く夢は、工房を大きくし、雇用を増やすこと。「裁縫が得意、ミシンが好きという女性が地元で働ける環境をつくりたい」
周囲から必要とされる喜びを感じる一方、好きなことができるのは、家族や友人、地域に支えられてこそ。「ここからもう10年、少しずつ返していけたら」
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