かつては三浦の夏の風物詩だった黄色のじゅうたんが、今は大草原に変身。その正体は、青々と茂った花の咲かないマリーゴールドだった--。
毎冬、一斉にダイコン栽培が行われる初声町三戸の畑。その農地の一角では、ダイコン栽培に欠くことのできない害虫駆除を目的に、「エバーグリーン」という品種のマリーゴールドが育てられている。
もともと、ダイコンに加害するキタネグサレセンチュウに対する抑制効果が高いことから、三浦半島では1985年頃から夏の休閑期に「アフリカントール」というマリーゴールドの栽培が普及した。畑にすき込むことで効果を発揮し、黄色やオレンジ色の花が咲いて景観用としても活用されていたが、今度はその花にオオタバコガの幼虫が卵を産みつけて新たな食害が発生。次第に栽培する畑が減っていったという。
その後、神奈川県農業技術センター三浦半島地区事務所が、2010年度からエバーグリーンの試験栽培を行い、抑制効果の高さを確認。さらに、茎や葉が柔らかいためすき込み後の分解が早く、花が咲かないことでオオタバコガの発生も防げるなど、利点が多いことから新たな緑肥として広まり始めた。
市内でいち早く試験導入したのが、生産者グループ「味菜研究会」。そのうちの1人、三戸の三上幸一さんは自身の畑で6年ほど前から栽培している。三上さんによると、センチュウ被害は一度発生すれば深刻で、「その年、その畑のダイコンは出荷できない。一発で全部廃棄」とため息をつく。
生産者は播種前に防除のための農薬を散布するのが通例だが、近年は薬剤の価格値上がりや消費者の減農薬志向の高まりもあって、エバーグリーン栽培に切り替える生産者も増加。三浦市農協営農部の岩崎隆幸さんによると、休閑畑に植栽することで大雨で土が流出したり、強風で砂ぼこりが立ちにくいといったメリットもあり、今年から組合員に手押し播種機の貸し出しを始めたという。
ダイコンの播種はおおむね8月頃から始まり、まもなくすき込み作業が行われる。「もうすぐ見られなくなる今だけの草原を知ってもらえたら」と三上さんは話している。
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