逗子市 病院誘致の議論、どこへ ヨゼフ計画から5年、具体策なく
逗子市が長年取り組んできた総合的病院の誘致。2009年に「逗子聖ヨゼフ病院」の誘致が失敗に終わってじき5年を迎える。高齢化が進む逗子では市民から総合病院設置を望む声は根強い。市は「(誘致は)今も諦めていない」とする一方で、病床数の制限などからいまだ具体策を打ち出せずにいる。
総合病院誘致は、1984年に市が国に対して池子米軍住宅地区への病院用地確保を要望したことに端を発する。これまで3度にわたる誘致計画が持ち上がったが、用地取得や医師会の賛同が得られなかったなどの理由からいずれも実現にはいたっていない。01年と05年、2度の誘致失敗を経て実施された06年の公募では、民間団体の社会福祉法人聖テレジア会の運営する「聖ヨゼフ病院」(横須賀市緑ヶ丘)が逗子への移転を計画。同年10月には市有地への移転が内定、07年に県が開設許可、08年は開設にかかる条例整備も進み、市が悲願とする総合的病院設置の目前まで迫った。しかし市が救急委託費として負担する予定だった1億3千万円が議会に問題視されたことや地元医師会と協調が図れなかったことなどから同法人が進出を断念。”あと一歩”で白紙に戻った。以降、誘致に前向きな法人はあらわれておらず、具体的な議論も行われていない。
誘致の議論が棚上げになっている理由について、市の担当者は「病床数の制限が一番のハードルになっている。(病院側から誘致の話が)あればすぐにでも対応したいが現実的には難しく、打つ手がないのが現状」と話す。病床数の制限とは、県が定める医療圏における病院施設などの基準病床数を指す。逗子市を含む三浦半島地域の基準病床数は12年3月末現在で4545床。長年基準に対する過剰が続いたことで翌13年3月末に5334床に改定されたが、現在の病床数は5231床と余剰は100床ほど。「救急を受け入れる病院の一般的な病床数は250前後。たとえ余剰分全てを逗子が使えたとしても、病院側の経営視点で言えば、進出するのは難しい」と同担当。聖テレジア会のように同じ医療圏内の移転であれば、病床数の制限はかからないが「それにも病院が移転に踏み切るだけのメリットが必要」。
医療充実は急務
一方で、総合病院がなく、今年中にも高齢化率が30%を超えるといわれる逗子の市民からはいまだ病院誘致を望む声は根強い。市内の65歳以上の救急搬送人員は2003年には1335人だったが10年後の13年には1871人まで増加。現在市の1次救急は逗葉医師会の医師らが輪番担当する逗葉地域医療センター(池子)が受け入れるほか、市や医療団体が連携し、地域医療の拡充を進める。一方で、入院治療が必要な2次救急は横須賀市立病院など9つの総合病院が輪番制で受け入れているが、中には浦賀や三浦など逗子から離れた病院もあり、重症の場合「どこに搬送されるか分からない」のが現状だ。
”八方塞がり”ともいえる病院誘致について、病院問題に取り組んできた市議の一人はこう指摘する。「市は医療機関の偏在化にも目を向けるべきだ。逗子には小児科の専門医院がわずか1院、圏内には3次救急の受け入れ先もない。まずはそこから議論を始め、県に働きかけていくことが今後の誘致に向けた道筋になる」
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