今春に完成した「葉山ふるさと絵屏風」の制作責任者で継承の会などの会長を務める 岩澤 直捷(なおかつ)さん 葉山町上山口在住 75歳
未来への橋渡し役として
○…農作業にお祭り。子どもたちが元気に遊びまわる姿――。昭和30〜40年代の上山口と木古庭に住む人々の暮らしを描いた「葉山ふるさと絵屏風」。この5月、地域のお年寄りらの記憶をもとに歴史絵巻とも言える大作を完成させた。2町内会と企業に大学生らも加わり足かけ3年。「苦労もあったが、人々の暮らしが生き生きと感じられる作品に仕上がった」と目を細める。
○…生まれも育ちも上山口。自らも絵屏風に描かれた光景の中で生き、その移り変わりを見つめてきた。「昔は家が少なくて垣根もなかったから畑や田んぼが一面に広がってた。通り沿いに生り物の木がたくさんあって、よく果物をもらったよ」と遠い記憶に思いをはせる。それから60余年。調整区域で大規模な開発を免れてきた地域でさえ、様相は大きく変わった。営農者が減り、休耕地が増え、里山に”荒廃気配”が漂い…。「このままでは上山口や木古庭らしさが失われてしまうのでは」。きっかけはそんな危惧感からだった。
○…子どもたちが絵屏風を前に語りあう。「こんな生き物がいたんだ」「今は何でいないの?」。過去と現在が交錯し、ふと地域の課題が浮かび上がる。次代を担う存在が未来とどう向き合っていくか。それを考えてもらうことこそ、絵屏風の最大の狙いだ。もう一つ”仕掛け”がある。絵屏風と一緒に発表された歌。言葉と音でより豊かな自然や地域の歴史に目を向けてもらおうと自身が発案し、作詞を手がけた。元々詩を書くのが趣味。「抒情詩を書くのは得意でね」と笑う。
○…今後は絵屏風の継承とともに、活用しながら地域の文化や歴史を伝える語り部の会の活動も本格化させる。11月には地域の文化祭でも絵屏風を解説する「絵解き」を行う予定だ。後世に何を伝え、何を残すか。やるべきことはまだまだある。「自分は野球で言えば中継ぎのようなもの。未来への橋渡し役を果たしていければ」と結んだ。
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