「ずし子ども0円食堂」の発起人 草柳 ゆきゑさん 逗子市沼間在住 65歳
「また食べにおいで」
○…いただきます――。掛け声がかかるとひとときの団欒(だんらん)の始まりだ。子どもも大人も一緒に食卓を囲み、出来たてのカレーに舌鼓を打ちながら談笑に花を咲かせる。5月に始動し、これまで計8回を数えたずし子ども0円食堂。徐々に認知が広まり、食材の寄付やボランティアの数も増えるなど運営も軌道に乗ってきた。「皆さんの応援があってこそ。本当にありがたい」と周囲への感謝が口をつく。
○…長年、食生活改善などの市民活動に携わる中で、逗子でも家庭の経済事情で子どもが満足に食事できなかったり、”孤食”を強いられている現状を目の当たりにしてきた。きっかけは2年ほど前、他市の市民有志が子ども食堂を立ち上げた新聞記事を目にして。それまでも「逗子にもあったら」という漠然とした思いはあったものの、行政に頼らず地域の課題に率先して向き合う人々を知ってはっとさせられた。「ほかの誰かじゃなく、思い立った人間がやればいいんだ」。その後活動をともにしてきた仲間に打ち明け、会場の確保や地域団体への協力に奔走した。
○…お腹をいっぱいにした子どもたちが笑みを浮かべて食器を戻しにくる。「美味しかった」「また来るね」。そんな一言が何よりのやりがいだ。最優先するのは、子どもにとっての居心地の良さ。賑やかな子もいれば大人しい子もいる。そうした中でどうしたら皆に「また来たい」と思ってもらえるかに心を配る。保護者からは好評だった食育の話を省いたのも「学校じゃないし、もっとラフでいいはず」
○…食堂の意義は何も幼い子どものためだけではないと感じている。女性の社会進出や共働き。社会構造の変化で一昔前に比べ、子育てを取り巻く環境は大きく変わった。「子どもだけでなく、親同士も交流しづらい現状がある。ここが地域のコミュニティを育てる場にもなってくれたら」。最後に熱意をかける理由を問うと笑顔でこう結んだ。「ただおせっかいなだけなんです」
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