単に見て描くのはではなく、五感を使って自らのイメージを絵やオブジェに表現する「臨床美術」の取り組みが逗子で行われている。昨年4月から市民グループが主宰するアートサロンが開かれているほか、高校の特別授業で取り入れられることもある。元々は認知症の改善や予防のために開発されたプログラムだが、子どもの創作意欲を高めたり、ストレスケアにも効果的とあって、活用の場が広がりつつあるようだ。
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先月25日、市民交流センターで創作に取り組む参加者の姿があった。「模様を一つ選んで、好きなように色をつけてみてください」。促されると参加者が思い思いに筆を走らせていく。線を付け足したり、何色を選ぶかも自由。途中講師が「いい色ですね」「素晴らしい発想」と声をかけると和やかな雰囲気が広がっていく。
「アートコミュニティ逗子」(安彦美里代表)が月1度開催しているアートサロン。毎回個人や親子連れなど10人ほどが参加している。参加者は認知症の人や趣味で参加する人など様々で、60代の女性は「毎回予想外のテーマで飽きない。美術の授業とは違って上手下手ではなく、自由な発想で描くのが楽しい」と話す。
臨床美術では正確な描写を求めるのではなく、感覚を表現する。例えばリンゴを描くのにはじっくり触り、香りをかいで食べ、生い立ちを想像しながら描く―といった具合だ。この日講師を務めた臨床美術士の高木啓多さん(44)によると五感の刺激とコミュニケーションで脳が活性化され、認知症だけでなく、ストレスの緩和にも効果がある。「作品はいわば自己の投影。褒め合うことは自己肯定感や自信に繋がる」。近年は介護や教育の現場で導入するケースも増えているという。
高木さんは「一般的な知名度は高くないが、臨床美術の取り組みをより多くの人に知ってほしい」と話した。
次回開催は4月8日(土)。同センターで午後1時から2時50分。参加費3500円(画材レンタル別途300円)。問合せは【メール】artcommunity.zushi@gmail.com
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