月に一度、朝の全校集会は先生の「お話」ではなくサイエンスショー――。そんなユニークな取り組みが2年ほど前から葉山町の一色小学校で行われている。ショーは月替わりでこれまで20回以上開催。子どもたちは目の前で繰り広げられる実験を毎月楽しみにしており、科学に関心を持ったり、論理的な思考を育む一助になっているようだ。
一色小 実験ショーに児童ら夢中
水の入った風船をガスバーナーの火に近づけてみる。「さぁ、何が起こるだろう」。問いかけると「溶ける」「割れる」と子どもたちが口ぐちに答える。しかし風船は一向に割れずそのままだ。「中に入っている水が風船を冷やしてくれる。だから割れないんだ」。解説すると見入っていた幼い目に感嘆の色が浮かんだ。「夏の葉山もこれと同じ。海が近くにあるから、気温が高くてもそれほど暑くはならないんだよ」
トレードマークの白衣に緑色の博士帽子、黒縁眼鏡。実験を披露するのは、同校の益田孝彦校長(57)、その人だ。実は益田校長、実験で子どもを惹きつけ、科学の原理を理解させる技術を競う「科学の鉄人」で3度、グランプリに輝いたことがあるサイエンスショーの達人。偏光板を使った「無敵の壁」、気圧差を利用した「一斗缶潰し」。これまで披露してきたショーは教員からも好評で、30代の男性教諭は「大人が見ていても面白い。毎回発見があって、子どもたちが科学に親しむいいきっかけになるのでは」と話す。
元々は中学校の理科教師。「魅せる実験」の技術は県青少年センターに3年間出向していたときに培ったもので、2015年4月に同校に着任して以来、毎月第2木曜日に腕前を披露してきた。「10分間なので、そんなに多くのことができるわけじゃないですが」。それでも集会が終わると、子どもたちは謎がすっきりと解けたような満足気な表情を浮かべてくれる。そんな瞬間がやりがいという。
わずかな時間ながら、実験ショーが子どもたちの知的好奇心をかき立て、科学への興味を後押ししている自負はある。だが一方で「ショーだけをやっていればいいわけではない」とも。担任教師とは違い、接する機会が限られる校長という立場は子どもにとってどこか縁遠い。ショーは児童らと信頼関係を築くためのツールでもあると考えている。「身近な存在であればこそ、話をしっかりと聞き、約束事も守ってくれる。その成果が大切なんです」
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