神奈川県原爆被災者の会副会長で葉山支部会長を務める 福島 富子さん 葉山町在住 77歳
着物が紡ぐ平和への願い
○…ある時は着物のことならなんでも相談に乗ってくれる「親切な着付けのおばちゃん」。また、ある時は核兵器の恐ろしさや、平和を希求することの大切さを伝える語り部として活動する。心の支えでもある大好きな着物は自身を後押しし、世代や国境を越えてその思いを紡いでいる。
○…生後7カ月の時、長崎で被爆した。その後、4歳でおばの家に預けられて育った。和裁や着物が身近で「えんぴつより針を持つ方が好きだった」という。1973年、夫の仕事の関係で、葉山に移り住んだ。「当時はスーパーもなくてびっくりした」と笑いながら振り返る。兄の勧めで被爆手帳を取得。会にも入った。被爆の記憶がないため長い間自覚はなく、「こじんまりした規模だから入れた」といい、自分の親ほど年の離れている「先輩」たちをサポートした。転機となったのは2011年の原発事故。「何かしないといけない」と語り部活動を始めた。「先輩たちのようには話せない」と悩んだ時期もあったが、特に子どもたちに伝わるよう読み聞かせの訓練に励んだ。現在も地元小中学校のほか、さまざまな場で講師を務めている。
○…育ての母の着物に「和」「Peace」の文字をあしらった帯を締め、核廃絶運動の節目に海外へ行ったことも。「おばに恩返しができたと思う」。昨年6月には若者の依頼でYouTube用に証言を収録。その縁で8月9日に長崎で直接会い、意気投合した。核兵器禁止条約初の締結国会議にあわせ、オーストリアを訪れるという彼女たちに大急ぎで着付けを教え、「和」の帯と振袖を託した。現地で立派に着こなし、活動する姿を見て「若い子たちの思いと行動力に感動した。少しは私らしいことができたと思う」と目を細めた。
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