9月1日に行われたサバット(フランス式ボクシング)の国内大会でMVPを受賞した 三本 貴彦さん 藤沢翔陵高校 教諭 28歳
闘う背中で魅せる生き様
○…靴とグローブを着用し、キックとパンチで撃ち合うフランス式ボクシング「サバット」。相手の頭や腹、足への攻撃ポイントで勝敗を競う。一般65kg以下の部では僅差で準優勝に終わるも、「ステップワークが華麗」という理由で大会MVPに。「嬉しいけれど、本当に自分で良いのかなという思い。これも練習に付き合ってくれた少林寺拳法部の部員と顧問のおかげ」と、はにかむ。普段、細身のすらりと伸びた手足に、礼儀正しい立ち居振る舞いが印象的なだけに、生徒や保護者からは「格闘技をするなんて意外」と言われるが、華麗な蹴りを得意とする熱きファイターとしての一面も併せ持つ。
○…鎌倉市出身。進学した藤沢翔陵高校では、器械体操部に所属していた。格闘技と出合ったのは法政大時代。沖縄発の武道「躰道(たいどう)」に触れ、器械体操と空手の要素をもつファイトスタイルに、「格好良いな。自分も強くなりたい」と道場の門を叩いた。サバット歴はまだ3年だが、器械体操の美しい動きと、躰道で培った蹴りが何よりの武器に。
○…大学卒業後、横浜隼人高や昭和鉄道高などを経て、国語教諭として母校へ。3年前に1年生の担任を任され、その生徒たちは来春卒業を控える。「3年間見守ってきた生徒を初めて送り出す寂しさもあるけれど、涙はこっそり物陰で」と照れ笑い。生徒に願うことは、「人や物事に対して、誠実な人間であって欲しい」ということ。『B組3大禁則事項』には「非常識・不誠実・無責任」を、『3カ条』には生き方を諭す3つの論語を掲げ、厳しく律する。
○…学年2位と成績優秀だった翔陵時代。「あと一歩のところで1番になれず、未だに悔しさが残る」。この頂点への憧れこそが、現在、リングで闘志を燃やす原動力に。「1番でしか味わえない幸福感や達成感を伝えたい。そのためにも、次こそは2番に甘んじずに優勝をめざす」。教え子のために、体当たりで後悔の無い生き方を伝える。