大正商家そのままに 打戻の「昭和文化館」
詩吟や写経、茶会など、打戻地区の文化コミュニティの場となっている盛岩寺境内の『昭和文化館』。2012年に大正時代の商家を移築・再建した貴重な建物だ。そのルーツを辿ると、江戸時代の「越前屋」にまでさかのぼる。
文久3(1863)年の浮世絵にも描かれ、藤沢きっての豪商だった「雨谷商店」(越前屋は屋号)。もとは遊行寺の黒門前に構え、明治・大正時代には砂糖や薬品、雑貨、石油などを扱う大地主だったという。
1923年の関東大震災により、大商店と家屋は倒壊。翌24年、かつての部材を用いて遊行通り(現・藤沢市藤沢68)へ移転・再建された。その後、38年に森氏が買取り、自宅として打戻で利用されていた。
時は流れ、2010年。老朽化により重機で取り壊すことを知った盛岩寺の中津川雅久住職が、「歴史的価値のある建物を壊してしまうのは勿体ない」と私産を投じて、宮大工や建具職人らによって移築した。建物には重厚な梁や建具、猫間障子が残されているほか、茶室を新設。かつて商品棚があった土間には、硝子戸と椀木庇が設けられているが、藤沢では現存せず、大変貴重だという。また、富士山が眺望できるように本堂へとつながる回廊は床高にするなどの工夫を凝らす。「民家や農家は保存されているが、商家兼住居の保存は数少ない。文化的にも貴重な場を提供したい」と住職は話す。見学は無料。 問い合わせは、同寺【電話】0466・48・5653へ。
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