美術館「菜茶房」の館長を務める 中村 知永子さん 辻堂東海岸在住 77歳
伊万里焼の魅力伝え
○…伊万里焼に魅せられて40年。これまで集めてきた皿や蕎麦猪口、ぐい飲みなどのコレクションは3000点を超える。その一部約100点を、自身が館長を務める小さな美術館で展示する。「特別有名な作品はないが、江戸末期から幕末まで、時代を通して展示する。他の美術館にないのは、歴史の流れが楽しめること」と話す。
○…収集家である夫の影響で、最初はヨーロッパの食器を集めていた。ある日、外国の友人から伊万里焼の皿を紹介されたが、知識がなく「どこの国の食器」と尋ねてしまったのだとか。「日本人なのに、こんな素晴らしいものを知らなかったという反省と、もっと知りたいという欲求がわいてきた」と振り返る。「何かものに憑かれたよう」と表現するほど、収集に情熱を傾けてきた。骨董品店に通うだけでは飽き足らず、古物商の免許を取り、専門店のセリに出向くほど。同時に研究会にも通い、歴史的背景などの勉強を重ねた。伊万里焼の魅力は「皿の中に日本画があるよう。温かみがあり、同じ模様の作品はない。職人が作品に込めた気のようなものを感じることができる」と言葉に思いが溢れる。
○…兵庫県芦屋市の生まれ。5人兄弟の下から2番目で自由奔放に育ったそうだ。22歳で結婚し、辻堂に移り住んだ。銀行員だった夫は箪笥の収集家。毎週のように骨董品店に通った。そうして集めた品は2003年に江の島の美術館で展示を始め、翌年には自宅を改装し、念願の美術館も開館した。
○…6年前に夫の体調不良を理由に美術館を閉館。2年前に夫が他界してからは、コレクションもどこかへ寄付しようかと考えていたが、娘の協力もあり、カフェを併設した美術館「菜茶房」として再開し展示することにした。作品や時代背景の説明は分かりやすくて評判だ。古伊万里の伝道師として作品の魅力を伝え続ける。