藤沢クマゼミ調査研究会で代表を務める 大谷 房江さん 辻堂在住
生命の神秘に魅せられて
○…力強い鳴き声で、日本列島に夏の訪れを告げるセミ。その中でも国内最大級の体長を誇るクマゼミの生態を調査する藤沢クマゼミ調査研究会を取りまとめる。市内の理科教諭を中心とした市民団体で、メンバーは約10人。「皆さんの熱意に推され、代表を務めているだけ」と謙遜する。
○…クマゼミとの出会いは5年前の早朝。趣味の植物調査で偶然立ち寄った辻堂海浜公園で目の覚めるようなセミの大合唱を耳にした。「これはただ事ではない」と足を進めると、一際大きなセミの抜け殻を見つけた。これまで藤沢では確認されていなかったクマゼミの生息が確認された瞬間だ。「仲間も驚いていたけど、一番驚いていたのは自分かもしれない」と目を細める。以来夏になると毎朝、生態調査のために抜け殻を探し回っている。「ここにいなかった生き物がどうやって広がっていくか、生き物ってどんな環境が好きなのか、と思いを馳せるととても楽しく、もっと知りたくなる」
○…研究会の調査活動には理科好きな子どもたちも参加している。メンバーがセミの生態や抜け殻の見分け方をレクチャー、羽化観察会を行った後、各自に近所で生態観測をしてもらう。「自然に目を向けることで人間は自然の中で生かされ、何事も自分勝手にはならないことを、子どもたちが知るきっかけになれば」と穏やかに笑う。
○…埼玉県出身。大学では生物学を専攻していたが、「今になってのめり込むとは」と意外そうに話す。結婚を機に移り住んだ藤沢では中学校教諭として教鞭を執ったが、現役を退いてからも日本大学生物資源科学部に3年間通い、学芸員の資格を取得するなど精力的。今ではクマゼミ以外の分野でも自然保護、調査などを行う数多くの団体で中心となって活躍している。「いくつになっても知らないことはたくさんある。足を使って日々それを知ることがライフワーク」と”理系女(リケジョ)”の顔をのぞかせた。