第65回川崎市書道展で市長賞を受賞した 中村 南仙さん 本町在住 57歳
恩師の雄大な字を追って
○…326点の公募作品が集まった「第65回川崎市書道展」で大作をエントリーし、5大賞の一つ、市長賞に選ばれた。「ダメモトで応募したのでびっくり。他の作品に比べてサイズが大きく、字が個性的だったから目立ったのかな」と控えめながら、「先生の教えに従って他の先生からも高い評価を受けたことはとても嬉しい」とにっこりほほ笑む。
○…漢字と仮名が混じる和歌が多い作品群の中、自身が書き下ろしたのは「ニハチ」と呼ばれる大きな和紙に、杜甫の漢詩を基に師匠が創作した56文字。「勢いと元気があって力強い太い線が好き」という書き方のスタイルで、入選作品は文字の大小や墨の濃淡に気を付けて文字に動きを出したという。今年は6月の「第66回藤沢市展」でも藤沢市長賞を受賞しており、その腕前は確かなものだ。
○…川崎市出身。小学1年生のころ、後に師匠となる父の友人が実家の一部を間借りして書道教室を作ったことがきっかけで筆を握り始めた。「先生が筆を一緒に持ってくれると上手い字が書ける不思議さと、自由に書かせてもらえる先生の教え方が大好きだった」。字は人を表すという通り、飾らず人を惹きつける明るく元気な声で話す。週に1度ペースの習字教室は社会人になってから一度中断。結婚を機に藤沢へ居を構えて家事・育児に専念。子育てが落ち着いてきた42歳ごろから再開し、川崎の恩師の元で子どもと一緒に筆を握った。
○…今は亡き師匠が残してくれたお手本を頼りに、夕食後などを利用して書の腕を日々磨く。ゆくゆくは家で小さな書道教室を開くという淡い夢を描き、仮名文字も特訓中。「書くたびに違う表情の字を書かなくてはいけないと教わったが、これが難しい。先生のように紙よりも大きく見えるほど迫力ある字が書けるようになりたい」。終わりのない稽古こそ、書の難しさであり、彼女が虜になる魅力なのだろう。
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