パネル展を開催する藤沢市遺族会の会長を務める 柴田 倭敏(まさとし)さん 藤沢在住 76歳
慰霊と平和へ思い繋ぐ
○…設立70年の節目を迎え、慰霊と平和への思いを繋ごうと、パネル展を開催する藤沢市遺族会の会長を務めている。8月10日から21日まで、藤沢駅北口地下道展示場(自由通路)で、市内にある慰霊碑や慰霊塔など、戦没者の霊を慰めている場所を、地区ごとに写真と地図で紹介する。初めての試みで、2月から撮影や地図作りなどの準備を進めてきた。「しょうがないことだけど、時が過ぎれば忘れ去られることも多い。市内にも戦争に行き、命を落とした多くの人がいることを今一度思い出してほしい」と話す。
○…1940年、静岡県袋井市で生まれる。3年後に父が戦地へ出兵し、翌年12月にフィリピンのレイテ島で戦死した。享年33歳だった。自身にとっては、まだ幼い頃の出来事で父の顔の記憶はないという。物心ついたころは母と2人だった。「今思えば母は強かった。誰しも逞しくなければ生きていけない時代だった」と振り返る。東京の大学へ進み、神奈川県庁へ就職。藤沢へは40年ほど前に結婚を機に移り住んだ。
○…昨年、日本遺族会による慰霊友好親善事業として父が戦死したフィリピンのレイテ島を初めて訪れた。「泣けてきた。オヤジと言葉を交わしたような気持ちになった」。70年以上の時は過ぎても熱い気持ちがこみ上げてきた。藤沢市遺族会の会員は現在500人ほど、全盛期の半数ほどに減少した。「遺族の思いを次の世代へ、どうやって繋いでいくか。孫やひ孫の世代への引き継ぎも視野に調査をしていく」
○…趣味は近所に20坪の土地を借りている家庭菜園。季節の野菜はもちろん、ルッコラ、パクチーなど香草も栽培している。他にも、書道やベランダでは鈴虫も飼っている。自慢は孫が7人いること。双子と三つ子がいるのだとか。「時々家族が集まると、わいわいしていて楽しい。幸せを感じる時だね」と、やさしい笑顔になった。