写真集「悠久の流れ 簸の川―神々の国 出雲―」を発行した 植田 英夫さん 鵠沼藤が谷在住 80歳
写真で伝える日本のルーツ
○…古から続く神事や文化、産業が今もなお人々の生活の中に色濃く残る島根県出雲地方。自身の出身地であり、「日本で最初に開かれたクニ」と、その神秘に魅せられ、写真集を発行した。「日本人のルーツを紐解くヒントが出雲にはある。神話に基づく特有の文化を後世に伝え、残す一助になれば」と話す。
○…今もライフワークとして楽しんでいるカメラとの出合いは幼少期。当時としては珍しく家にカメラがあり、現像室もあるなど、写真を身近に感じ、楽しめる環境で育った。社会人になるまでは島根県で過ごし、就職を機に鎌倉へ。写真好きだったこともあり、富士フイルムで研究や開発などを手掛けてきた。数年後に結婚し、妻が住んでいた藤沢へ居を移し、仕事の傍ら家族写真なども楽しんできた。
○…60歳の定年後にカメラへの熱を高める。被写体はカワセミや旅先での自然、古城など様々。5年前には中国雲南省の少数民族を題材にした処女作の写真集を手掛けた。「その中国大陸から稲作文化が日本に伝わってくるなど、日本人のルーツにどう関係しているのか、とても興味深くなった」。出雲の写真集制作では片道約750Kmの距離を藤沢から単身車で往復。神社や役所などに直接赴き、およそ5年間におよぶ取材を続けてきた。
○…現在は出雲の写真集を広めるため、都内や島根県で写真展を計画。今後は観光目線ではない湘南をテーマに、次回作への意欲を燃やす。「時代はフィルムからデジタルへと変わり、より手軽に写真を撮れるようになった。でもその一瞬にシャッター切り、1枚の写真に収める楽しみに変わりはない」。妻を4年前に亡くして一人暮らしだが、今は写真に生き、人生を謳歌している。「藤沢市文化団体連合会」で会長を務めたこともあるほどのベテランながら、写真の魅力を語る表情ははとても優しく、明るく、人柄も気さくだ。