2020年東京五輪江の島セーリング競技大会で、メダルが有望視される藤沢ゆかりの選手がいる。女子470級の吉田愛・吉岡美帆ペア。昨年、日本女子選手では初めて世界の頂点に立ち、9月のワールドカップでも銀メダルに輝いた。2人が集大成と位置付ける東京五輪まであと1年半。今年は勝負の年になる。
世界に存在感を示した瞬間だった。
昨年8月、デンマーク・オーフス。セーリング世界選手権に出場した吉田吉岡組が女子470級で優勝し、頂点に立った。日本女子選手の金メダルは五輪を含めて初の快挙だ。
10歳年上でチームをけん引する吉田愛選手(38)は歓喜の瞬間をこう振り返る。「がんばってきて、本当によかった」。紆余曲折を経て、ようやくつかみ取った栄冠だった。
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今から6年前、ベテランセーラーは競技人生にピリオドを打つか、継続するかで迷っていた。08年北京、12年ロンドンと続けて五輪に出場するも、いずれも14位と振るわず。「このまま続けていても、これ以上の成績が望めないかもしれない」と自信を失っていたからだ。
だが、あるとき参加したセーリングの試乗会での出会いが再び契機になる。年齢こそ自分よりひと回り若いが、意志が強く、長い期間モチベーションを維持できる人材。「彼女となら」と声をかけたのが現在ペアを務める吉岡美帆選手(28)だった。
一方の吉岡選手。元々は卒業後競技を続けるつもりはなかったが、トップレベルの選手との出会いが刺激になり、「私も吉田選手のようになりたい」とペア結成を快諾した。
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13年の結成以降、着実に結果を伸ばしてきた。特に昨年は世界選手権、アジア選手権と世界大会で立て続けに優勝。9月、東京五輪のテスト大会に位置付けられるワールドカップ江の島大会でも銀メダルを獲得した。
その要因として、吉田選手はパートナーの成長ぶりをあげる。「昨年、自分が出産から競技に復帰するまでの間に吉岡選手がレベルアップしてくれていて、いいリズムにのれた」
吉岡選手にとっては吉田選手とともに挑んだリオが5位とメダルに届かなかったのが何より悔しかった。「吉田選手が戻ってくるまでもっと力をつけたい」と海外を転戦し、技術や精神面を鍛え上げていたという。
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東京五輪で頂点を目指す2人にとって、トップ選手がしのぎを削るW杯を制したのは文字通りの試金石だ。「自分たちのピークを目標の大会に持っていくのは東京でも同じ。成功例を作れたと思う」と吉田選手。
ただ今年は五輪代表選考の年。権利を獲得するためには、選考大会で着実に結果を残すことが求められており、吉岡選手は「目の前の大会に集中したい」と気を引き締める。
「東京五輪は選手としても集大成になると思う」。1年半後への意気込みを問われ、吉田選手はこう返す。2人でひとつの船。吉岡選手も思いは同じだ。
「このチームでがんばってきた。最高の形で終わりたい」
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