「思い通りにならない面白さ」
全国でも珍しい「版画工房」兼「活版印刷工房」が市内にあると聞き、訪れたのは藤沢駅近くの住宅街。城戸宏さん(55)・優子さん(54)夫妻が営む「リン版画工房」と「ツバメ活版堂」の扉を開けると、西洋の美術館や古書店を思わせるほのかな油性インクの香りがした。
30平方メートルほどのアトリエ兼工房には銅版画、活版印刷などのプレス機、ローラー、カラフルなインクが所狭しと並ぶ。工房では、作家や出版社から依頼された版画制作、自身の創作活動に加え、版画教室も開催。生徒は延べ数百人という。
東京造形大で学んだ後、町田版画美術館の講師などを経て1990年に鎌倉に工房を開設、96年に市内へ移転。工房名は画材の「燐(りん)」由来で、現代作家の大御所・加納光於氏が名付け親だ。
創作のこだわりの中から、「版画に似合う文字」を追求し、一度は絶えかけた活版印刷の復刻にも関わった。版画を続ける理由は「面白いから」と口を揃える。全てが手仕事。「大量生産のための印刷技術なのに、一つも同じ作品ではなく、思った通りにならないことの方が多い」。だからこそ「思った以上の出来になるとたまらない」のだという。「そういえば30年にもなるんだね」と夫婦で笑う。
リン版画工房/ツバメ活版堂:藤沢1057【電話】0466(50)5044
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