▼先頃、藤沢市がスマートフォンの位置データを活用して実施した検証で、春の大型連休(GW)に江の島を来訪した観光客の数がコロナ禍以前と比べて6割近く減少していることが明らかになった。知名度に加え人が密集しやすい土地柄、「3密」を象徴する場所かのように報道されることも少なくなかったが、「従来に比べ明らかに人出は減った」という島内関係者の言葉をデータが裏付けた格好だ。一方、回復への道のりは遠く、観光地・江の島はポストコロナに向けた生き残りが急務となっている。
▼検証結果では、客層の変化も浮き彫りになった。インバウンド(訪日観光客)需要が途絶えた一方で若者客が目立つようになり、県内など近場の来客が増える「マイクロツーリズム化」も鮮明になった。今後、コロナが収束しても従来型に戻る保障はなく、ならば観光行政にも現状の客層や社会情勢に応じた新たな戦略が求められよう。裏返せば、打開策がコロナ後の江の島にとって新たな武器になるはずだ。
▼糸口の一つが、ウェブなどを介した「ニューノーマル型観光」の推進だ。市は4月から江の島観光がVR(仮想現実)で疑似体験できる「DX ENOTOWN」の運用を開始した。岩屋が360度見渡せたり、観光ガイドが見どころを解説したりする。若者には訴求しやすく、土産物などと連動すれば消費喚起にもつながるのではないか。秋にはサムエル・コッキング苑の温室遺構整備など好材料もある。オンライン限定のツアーなども面白いかもしれない。
▼ポストコロナ時代に選ばれる観光地はどこか―。江の島を含め、コロナ禍で深刻なダメージを受けた各地の観光地は、水面下で厳しい競争にさらされている。幸い、藤沢市はこれまで観光関係者と緊密に連携し、観光施策や感染防止対策を重ねてきた実績がある。官民が連携し、鈴木恒夫市長が様々な場面で口にする「マルチなパートナーシップ」を発揮する。それこそが生き残りの鍵になるはずだ。
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