東京パラリンピックが5日に閉幕した。市ローリングバレーボール協会の前田貴美子さん(66)は「今大会を通じ『パラスポーツを知らなかった』という声を多く聞いた。障害者は弱者として扱われがち。これまでと異なる”強い”一面を見せられたのでは」と振り返る。そしてこう続けた。「障害者のスポーツの強さとは、運動能力に限らない、努力を続ける心の強さだと思う」
コートに座る選手たちだが、休憩時間ではなく試合中。ローリングバレーは球を転がして行うバレーボールで、1977年に国内の養護学校で生まれ、市内では同協会を中心に秩父宮記念体育館などでプレーされている。
ほかの障害者スポーツと異なるのが、参加に障害の種別を伴わないこと。パラリンピックでもクラスが分かれるが、ローリングバレーでは、全盲の人や車いす使用者、90代の高齢者、1桁歳の子ども、健常者が1チームに入り交じり試合を行う。
活動のキャッチフレーズは「誰一人取り残さない」。仲間にも打ちやすく相手もケガさせない球を心がける「思いやりのパス」や「心と心のキャッチボール」といった独自の文化も持つ。
勝利のカギは、個々の能力の高さではなく、仲間をよく知ることで生まれるチームの呼吸。「レシーブ、アタック、防御。試合を楽しむために、全員が全ての役割で100点がこなせなくていい。自分にできることでボールをつないでいくのが大切」と前田さん。
例えば、寝たきりの選手は防御の要に。ボールを当てる場所は体のどこでも良いため、横になっている分有利になる。床に手が届かない人がラケットを使うなど、それぞれ創意工夫を凝らして試合を楽しむ。
前田さんが活動に関わるようになったのは約20年前。「勝ち負けを至上としない、楽しむことを中心に据えたスポーツの在り方」を模索する中で、同協会初代会長の杉浦嘉昌さんと出会い、スポーツを通じ障害者や健常者の垣根を無くそうと尽力する姿に感銘を受けた。自身は健常者であったが、近年腰を痛め「改めて、誰でも参加できる素晴らしさを実感できました」と笑う。
「障害者を知ってほしい。知識だけでなく、存在として興味を持ってほしい。スポーツによる国や文化を超えた交流が五輪。スポーツを通じ、障害を越えた交流もできるはず」と期待を込めた。
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