津波や大雨など災害発生時、一刻一秒を争う人命救助の現場で活動する災害救助犬。いつ来るとも分からぬ災禍に備え、葛原で日々訓練に励む犬と訓練士たちがいる。村瀬ドッグトレーニングセンターを拠点とする「救助犬訓練士協会」(村瀬英博代表)は、国内の災害救助犬の訓練と普及に努めている。
葛原の農地の中に作られた、災害現場を模した訓練場。ジャイアントシュナウザーのオリガミ(2)は、訓練士の村瀬涼子さん(37)の指示のもと、隠れた要救助者役を鋭い嗅覚で嗅ぎ出し、「ワン、ワン、ワオン」と大きな声で発見を報告した。
同センターでは一般的な犬のしつけや警察犬などの訓練と合わせ、災害救助犬の育成指導、派遣を行う。見習いも含め約10人の職員が約50頭の犬と毎日を過ごす。現在、災害救助犬として出動できるのは6頭ほどだ。
救助犬は犬種問わず、大きな音や初めての場所にも動じず、人なつっこい性格の犬が向いているとされる。訓練開始は生後半年ほどが一般的で、順調な犬は2年ほどで合格する。
犬の嗅覚は人間の約100万倍超。汗などの生体反応をかぎ分け生きている人間のみを探し出す。警察犬と異なり特定の臭いを必要としないことから「究極の探知犬」とも称される。
各救助犬に「ハンドラー」と呼ばれる訓練士が付き、相棒としてペアで活動する。普段の訓練は、投げられたボールを取ってきたり、ハンドラーの後を追いかけるなどしながら、人の言葉を覚え、過酷な環境でも活動できるよう体を慣らし、探索能力を養っていく。
「救助犬にとって、人を探し出すことは遊びの延長線」と村瀬さん。「かくれんぼに近いかも。彼女らにとって、見つけて、褒められてうれしいという気持ちが原動力。有事もポテンシャルを落とさず、いかにやる気にさせるかがハンドラーの腕の見せ所」と説明する。
直近では、7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害にも出動。一面の泥と瓦礫の中、助けを待つ人の探索に尽力した。
生存者探索のほか「ここに生きている人はいない」という判断も重要任務。「重機を入れ、より先の探索や災害復旧のスピードを早めることにも貢献でき、初動で特に活躍が期待される」と村瀬さんは力を込める。
欧米では出動は一般的だが、国内での知名度はまだ低く、現場で待機となるケースも。阪神淡路大震災の際に海外から派遣された災害救助犬が検疫などで足止めされたことも発足のきっかけの一つだ。「彼、彼女らの存在、能力と可能性をもっと広く知ってほしい」と村瀬さんは笑顔を見せた。
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