11日に開幕した「江の島国際芸術祭」で総合監督を務める 藤原 大さん 県内在住 56歳
地域の美しさ感じて
○…着目したのは空の色だ。夕暮れが始まり、空が黄色く色づいていく。次第に赤みを帯び、江の島の輪郭を際立たせながら闇に沈んでいく。こんなにも、美しい。それに世界は同じ空でつながってる。だから、国際と冠した。江の島と片瀬海岸を舞台にした初の芸術祭。「湘南は環境そのものが一つの作品。地域の美しさを再発見してもらうための装置として芸術祭を発展させたい」
○…国内外で活躍し、世界的にも評価の高いデザイナー。湘南に事務所を構え、創作活動や大手企業との共同事業、講演などを多数手掛けるほか、多摩美大の教授として教鞭もとる。多忙を極める中、総合監督を引き受けたのは、「地域」がかねて活動領域の柱の一つであり、「湘南の美しい風景を地域の側面から見つめるお手伝いができれば」。そんな思いを抱いていたからだ。2018年に江ノ電の車両をデザインし、話題を呼んだことも縁になった。
○…今回の芸術祭は江の島に新たな春の風物詩を作り、通年型観光の推進を図る目的もある。かつてパリコレクションにも携わった視座から江の島をこう見る。「モン・サン・ミシェルにも負けない、世界に誇れる魅力がある。ヘミングウェイが暮らしていたら『世界の江の島』になっていたかもしれない」。もっと堂々と発信していい。そう太鼓判を押す。
○…風景に紙を重ね、自然界の色を採取する自身の独自手法「カラーハンティング」。夕日の始まりと夕暮れ、空の色の移ろいを表現した黄とオレンジは今回のコンセプトカラーだ。期間中、島内の店舗の店先にのれんを掲出するほか、片瀬海岸には夕景の色彩に合わせたビーチフラッグも並べる。「湘南の魅力である空と時間。訪れる人に気づきを提供できたら」