クロマツのある景観を残そうと植栽活動などを行う「クロマツプロジェクト」の代表を務める 岡部 真久さん 辻堂元町在住 43歳
楽しくないと続かない
○…「市の木でもあるクロマツを後世に」。1年半活動し、試行錯誤を重ねてきた。当初は「民家で育てて景観を取り戻そう」と、本業のランドスケープデザイナーのつてを生かし、クロマツの苗木と多肉植物を低価格で販売。10回の販売会で手応えはあったが、聞こえてきたのは「育った後植え変える場所がない」「敷居が高い」。そんな声だった。
○…もっと気軽にできないか。辿り着いたのは「クロマツの里親」を増やすこと。根に天然素材のカラフルな糸を巻き付けて、写真映えもするおしゃれな苗木を「クロ松玉」として販売。2〜3年プランターで育てた後は「ちっちゃい辻堂」と名付け自身も携わる開発中のコミュニティースペースに植樹する仕組みだ。「これなら若い人もかわいいと感じ、無理なく続けられる」。目論見が当たり、里親のなり手も増えてきた。
○…さらに打ち出したのは「松を食べる」という驚きのコンセプト。実は日本でも古来、健康食だったことを知り、調理や商品開発を始めた。松葉茶や松塩、松のアンチョビ風ペーストなどを試作中で「かなりおいしい」。仲間とイベント出店やWEBミーテイングを行う度、雑談交じりにアイデアが生まれていく。「面白いと感じて、楽しくないと続かない」
○…辻堂小、湘洋中時代は引地川で川を下って魚をとり、実家の20本のクロマツの近くに秘密基地を作って遊んだ。「自分の原風景。今では意識しないと思い出せなくなった」と失った風景を懐かしむ。現在は妻、息子2人、娘と暮らし、ランドスケープデザイナーとして国内外を飛び回り、建築物の庭や風景を手掛ける。「100年先に、原風景を取り戻そう」。原動力を地域活動にも還元していく。