3月24日から作品展を開く「藤沢市自閉症児・者親の会」の会長を4月から務める 宮久 雪代さん 鵠沼神明在住 61歳
足りなければ補えば良い
○…今年で12回目となる作品展には、市内の自閉症児・者が描いた絵画や切り絵、手芸、書など50点以上を展示する。作品だけでなく、障害の特性をまとめたパネルや、大人になるまでの成長記録も表示する。「自閉症という障害を持ち、困ったことを抱えながらも地域で育っていることを知ってほしい。作品を見れば、彼らの息遣いや鼓動を感じてもらえる」と話す。
○…息子が3歳のころに他の子どもと違うと気付いた。当時は自閉症が知的障害として広く認知されておらず、診断してくれる病院も近隣になかった。本を読み、人から話しを聞き、息子の障害を学んでいった。「小さい頃は本当に大変だった。泣き叫ぶ、すぐいなくなるから目が離せない」。小学校は養護学校へと進路を考えたが、「弟と同じ小学校に通いたい」という姉の言葉で、市立小学校の支援学級へ入学。6年間歩いて送り迎えを続けた。現在、息子は30歳。「地域の人に支えられ、子育てができた。とても感謝している」と目を細める。
○…「親の会」には、息子が小学校3年生のときに、同じ障害を持つ親子と交流を持ちたいと入会した。携帯電話やインターネットが普及する前、同じ経験を持つ人々が集い、愚痴をこぼしたり、悩みを打ち明ける居場所ができたことは心の支えになった。何事にも前向きで明るい性格は、会員の信頼も厚く、最近では会を代表する存在に。「多くの人のサポートを頂いた。これからは、私たちが若いお母さんたちの力になり、社会への窓口になりたい」と思いは強い。
○…生まれは大分県中津市。小学校5年生のときに怪我が原因で右目を失明する。ハンディキャップを背負い生きてきたことが、息子の障害を受け入れやすくしたという。「人はそれぞれ違う障害を背負っていると感じる。足りないものは、あるもので補えば良い。子どもが健全に育つことが一番大切」。優しく微笑んだ。