敗戦後の満州で過ごした女性の波乱な引き揚げの人生を後世に残そうと、辻堂東海岸在住でフリーライターの鈴木政子さん(83)が4作目となる本を出版した。今回上梓した『語らなかった女たち―引揚者・七〇年の歩み』は、鈴木さんが11歳の頃、満州で実際に目にしたつらい現実や、収容所での生活、保養所で堕胎が行われたことなどが記されている。
物語の主人公のゆう子(17)は、鈴木さんが現地で出会った女性がモデル。鈴木さんの父親が校長を務める学校へ教師の助手としてやってきた。終戦時に収容された綿花工場では、粟や岩塩しか口にできず、亡くなっていく日本人であふれていた。ゆう子はソ連軍の兵士に襲われ、子どもを身ごもってしまう。帰国後に堕胎するものの、「わたしの赤ちゃん」を思い続け、生涯を終える。
鈴木さんは45歳の時、『あの日夕焼け』でデビュー。満州から帰国するまでに兄弟4人を失った話を必死の思いで書き上げた。鈴木さんは「執筆中は自分の身体を削っているようだった。でも、思いを文章にしたから前に進むことができた」と振り返る。
今後も自身の体験したことを若い世代に伝えていくという。「戦争は絶対にしてはいけない。実際、何が起きていたのか知って欲しい」と強く訴える。
同書『語らなかった女たち』は、本の泉社から1冊1300円(税別)。
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