新年の幕開けにあたり、本紙では鈴木恒夫藤沢市長に単独インタビューを行った。1年半後に控える東京五輪江の島セーリング競技大会への意気込み、五輪を契機としたまちづくりのほか、市の課題となっている藤沢駅周辺や公共施設の再整備、市の財政状況などについても尋ねた。(聞き手は本紙、原田一樹・佐藤弦也)
――まずは昨年1年間を振り返って。印象に残った出来事を聞かせてください。
「まずは市役所の本庁舎が1月から使用できるようになり、1年間で多くの市民に足を運んでいただきました。整備前よりも学生など若い人が増えたのが特徴で、行政機関としての機能だけでなく、当初目指した、『人・環境にやさしい市民に親しまれる庁舎』が実現できていると思います。また昨年は特に皆さんの郷土愛を実感できた年でもありました」
――7月には民間会社が発表する「シビックプライドランキング」で全国151の自治体中、藤沢市が愛着部門で第1位になりました。
「市政運営については『郷土愛あふれる藤沢〜 松風に人の和うるわし湘南の元気都市〜』を標榜しており、市民の愛着度が高いという評価をいただけたのは大変喜ばしいことです。人口減少社会にあっても藤沢では人が住み続け、微増ではありますが、転入者が多い状況が続いております。また2020年の東京五輪に向けて昨年スタートした2020応援団『藤沢ビッグウェーブ』の登録者数が1万人を突破したのも、そうした表れではないかと思っています」
――セーリング競技が行われるのは江の島沖です。市長は「市民参加型」の五輪を掲げていますね。
「五輪というビッグイベントが地元にやってくるのは本当に名誉なこと。藤沢に縁のある人たちが、何かできるか話し合ったり、大会への思いを共有したり、繋がりを作るのが2020応援団です。その意味では、登録者数が大台に乗ったことは素直にうれしかった。またそうした人々の熱意やエネルギーを五輪限りで終わらせてしまうのではなく、大会後に継続させていくことも目標のひとつです」
――最終的には5万人を目指すとのことですが、応援団はいわば「藤沢ファン」。まちづくりの未来を考える上でも心強いですね。
「まさにその通りです。行政が形を決めてあれこれと主導するのではなく、市民一人ひとりの気持ちを後押しして、ゆくゆくはそれが”大波”になっていくのが理想の形。数字ありきではなく、なるべく多くの人に参加してもらえたらうれしく思います」
――昨年は五輪のテストも兼ねて、セーリングワールドカップシリーズが開催されました。1年半後の本大会に向けての準備は。
「大会運営自体は組織委員会に委ねられる部分ですが、開催会場としての課題もあります。『おもてなし』や救急体制の整備など、世界各国から訪れた人々に『藤沢はいいまち』だと思ってもらえるよう、しっかりと準備を進めていきます」
――市長は1964年東京五輪で聖火ランナーの伴走を務めました。当時の思い出話などあれば。
「私は当時中学3年生で陸上部に所属していました。市役所前から海に向かって(現在の)国道を走ったのですが、当時は荒廃した国の復興とともに、国をあげて平和の祭典に沸いていると感じました。ヨットが並ぶ江の島や万国旗、見る物全てが新鮮で、数えきれない人が詰めかけていたのを覚えています」
――東京2020大会への聖火リレーの思いは。
「東京2020大会でも、聖火リレーが藤沢のまちを走ることを願っています。皆さんとどこかで応援ができたら素敵だと思います」
官民協働で賑わい創出
――藤沢駅周辺の再整備が進んでいます。進捗を教えてください。
「北口から段階的に整備を進めており、現在リニューアル工事を行っているサンパール広場は年末に完了する見込みです。改修後はバリアフリー対応など、時代のニーズに応じた広場に生まれ変わる予定です。また南口駅前広場の再整備に向けては、検討組織における協議内容やアンケートで寄せられた市民の皆様のご意見を踏まえながら、今後基本計画を策定していきます」
――近年、藤沢の中心地に賑わいを取り戻すことが課題になっています。再整備への期待感は。
「藤沢駅は交通の要衝ですから、再整備が完了すれば今以上に人の流れが活性化し、その分賑わいは増すでしょう。そうなれば民間投資など様々な波及効果も期待できます。また、サンパレットでは2017年度から賑わいを創出する様々な社会実験を行っており、市としてもハード面の整備だけでなく、ソフト面についても民間の協力を得ながら賑わいづくりを後押ししていく考えです」
――市民会館の再整備について。昨年11月、改修ではなく建て替えという方針が打ち出されました。約120億円の大型事業になるとのことですが。
「市民会館は完成から半世紀が経過し、館内の座席やトイレのほか、関連設備も老朽化が進んでいます。もちろん改修という選択肢はありましたが、構造的な改善は難しい上に、いずれは建て替えなくてはなりません。今後、少子高齢化が進み、財源の確保が難しくなることを考えれば、建て替えの方が賢明との判断です。藤沢は元々、文化活動が盛んですから、利用者の声を聴きながら整備を進めていきます」
――単独の建て替えではなく、いくつかの公共施設を複合化する方針とのことですが、今までなかった機能が加わる可能性はあるのでしょうか。
「可能性としてはありますが、敷地の広さや財源の問題もあります。藤沢市に限らず、高度経済成長期に建設された公共施設の多くが更新期に差し掛かっており、今後は複数の施設をまとめるなど効率化が必要になります。具体的な議論はこれからになりますが、市民や議会の要望を聴きながら検討を重ねていきます」
――昨年中期財政計画の見直しが発表され、5年間で584億円の財源不足が見込まれることが明らかになりました。市民サービスへのしわ寄せが懸念されますが。
「藤沢市は地方交付税の不交付団体(財源が豊かで国からの交付税を受けない自治体)であり、健全な財政状況を維持しています。中期財政計画の見通しは、想定する全ての事業を実施した場合の予測であり、基本的な市民サービスが低下するということではありません。扶助費など義務的経費が増加傾向にある中にあっても子育てや高齢者支援など、事業の優先順位を見定め、年度ごとの予算編成に取り組んでいきます」
――JR藤沢駅‐大船駅間の「村岡新駅」誘致の話題が再浮上しています。実現の見通しは。
「新駅誘致については30年来の経緯があり、現状は県と藤沢市、鎌倉市の事務レベル間で協議を進めています。3者の合意が整った後、JRに対する新駅設置要望を目指します。藤沢市としても費用負担が発生することなので、将来的なまちづくりや費用対効果を見極めながら、進めていきます」
――最後に43万人藤沢市民に対してのメッセ―ジをお願いします。
「東京五輪もいよいよ来年に控え、セーリング競技会場を抱える藤沢市としてもしっかりと準備していく1年になります。五輪成功のためには、市民の皆さんと一体となり、様々なことに取り組みながら気持ちを共有していくことが不可欠。またその先に藤沢市の発展があると信じています。今年はどんな困難にもひるまず、目標に向かって、市役所職員一同、一丸となって進む年にしたいと思います」
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