1月17日に発足した「鎌倉に震災銭湯をつくる会」の代表 岩井 健作さん 市内二階堂在住 77歳
「銭湯」から震災を考える
○…阪神・淡路大震災の被災経験から、「銭湯は地域のつながりを維持するのに大きな役割を果たす」と語る。今回、市浴場組合が提案する防災拠点としての「震災銭湯」構想に賛同し、代表を引き受けた。
○…地震発生当時、居住していた神戸市中央区の花隈町は、比較的被害が少なかったという。それでもガスが復旧したのは3カ月後。家は倒壊せずとも風呂には入れない。自衛隊の簡易風呂には入浴希望者の長蛇の列。「野営用であって衛生的にも問題があった」。風呂の付いた仮設住宅も設置されたが、ガス代は利用者負担で、多くの入居者が「もったいない」と利用を控えた現実もあったという。
○…仮設住宅は、各地区からの当選者が入居したため、隣近所は知らない人同士。「地域がバラバラに。結局、貧乏人が苦労する」とぽつり。「長田地区で銭湯再開の一報が入り、みんな行きました。仲間に会えるからです」。「コミュニティーの回復に銭湯が一役買った。この意味を行政はしっかり考えるべきです」。
○…現在は、明治学院教会の牧師とし、年50回以上の「説教」を行う。同志社大学神学部大学院を卒業後、日本基督教団の牧師として、広島・呉・岩国を巡り、最後の神戸には24年間も従事した。「ゆっくりしたい」と02年にリタイアし、妻の両親が住んだ鎌倉へ。
○…仕事の合間をみてはキャンバスに向かう。江ノ電や鎌倉の小路を題材に、時折筆をとる。神戸市を代表する洋画家で信者でもあった小磯良平氏について、「本を書きたい」といずれ出版予定だ。
○…一貫して弱者に光を当てる。「自らが救済を実践しなければ」と語気を強めた。「地震はいつか必ず来る。その時にいかに人間らしさを創り出すか。人とのふれ合いを回復する銭湯は、その手段の一つです」。震災銭湯を声高に訴えることで、「一人でも多くの人が、震災を考えるきっかけになれば」と語った。