日本蝶類学会の理事を務める 原田 基弘さん 手広在住 70歳
人生の基盤に蝶がある
○…「蝶の美しさを追い求めるのが生活の中心」と語り、その半生を蝶に捧げてきた。日本蝶類学会に所属し、3年前から理事に。78年謎に包まれていたブータンシボリアゲハの生態を、現地入りして解明した調査隊の隊長を務めるなど、その功績は記憶に新しい。10月にはNHKスペシャルで特集が組まれた。
○…横浜の伊勢佐木町生まれ。蝶を好きになるきっかけは小学生のころ隣に住んでいた医大生・早野育男さんの影響から。「早野さんに近くの山や森に連れて行ってもらい幼虫を採集した。僕の蝶人生はここから始まった」と振り返る。中学生のころよく散策していた森で偶然出会った大人に、得意になって森の中を案内。その人がアゲハ蝶の研究で有名な五十嵐邁さんだった。「最初はすごい人だなんて知らなかったから『俺は他の人より一歩進んで幼虫を採集している』とか生意気な口を利いていた」と苦笑い。その後も交流が続き、成人してからは蝶探索の海外渡航に同行するようになった。「五十嵐さんは亡くなった今でも思い入れの深い蝶の師匠」と話す。
○…高校卒業後は多摩美術大学に進学した。グラフィックを学び、卒業後はデザイン事務所に就職し、30歳で独立。その理由を「蝶を探しに行くためにもっと自由に時間が使いたくて」とし、いたずらっぽい笑みを浮かべた。鎌倉に越してきたのは35年前。「自然の多いところで蝶を飼育したくて、ここに家を買った」と話し、その家には現在150箱の標本を所蔵する。「なんといっても美しさが一番の魅力。特に小さいシジミアゲハが好き」と満面の笑みで語った。
○…現在は妻と2人暮らし。「家族は皆蝶に興味がない。迷惑をかけているはずなのに文句ひとつ言わなかった」と家族の理解に感謝する。退職後は蝶に関する論文を作成するかたわら、近所の仲間と農作業を楽しむ。「春菊など自分で育てたものは格別」と笑った。