建長寺でカンボジア地雷被害の写真展を行う 粂川(くめかわ)真木彦さん 藤沢市在住 45歳
「奪われた」日常を写す
○…笑顔で赤ちゃんを抱く女性、肩を並べて歩く親子。白黒写真で切り取った彼らの姿には足や腕など、あるべきものがない。カンボジアで写真を撮り始めて10年以上。今週末には建長寺で写真展「奪われた手足―カンボジア・地雷とともに生きる」を開催する。「地元でちゃんと展示をするのは初めて。作品から何か感じてもらえれば」と話す。
○…稲村ガ崎で育ち、父親の仕事の都合で中学の2年間はシンガポールで過ごした。日本との生活環境の違いに戸惑い、それは帰国後も続いたという。その影響もあって、鎌倉高校3年の時に休学し「もう一度海外へ」と1年間アルゼンチンに留学。大学進学後は教師の道を志すも、迷いをかかえたまま20代後半に。30歳を目前にして「世の中の色々なものを見て回りたい」と一念発起し写真の道へ飛び込んだ。未経験ながらスタジオで働き始め、技術や知識を貪欲に吸収。徐々にカメラマンとして自立するようになった。
○…地雷問題を初めて意識したのは、たまたま参加した講演会だった。「こんな大変なことになっているなんて」と衝撃を受け、1997年にカンボジアに渡った。初めにレンズを向けたのは両手を失った物乞いの男性。ぐいぐいと身体を寄せ自分の傷を主張してくる男性に、たじろぐことしか出来なかったという。「障害に立ち向かう人はみな聖人、という勝手な自分の思い込みにはっとさせられた」と振り返る。その後は2年に1回のペースで赴き、市場などの日常を収めていった。「被害者には良い人も悪い奴もいる。日常をそのまま写すことで、地雷被害のありのままを伝えていきたい」と強い眼差しで語る。
○…結婚を機に東京に移り、11年に藤沢へ。子どもが生まれてからは忙しく、カンボジアを訪れていない。「5年位前に会った男の子はどんな青年になっているだろうか、とても気になる。落ち着いたら会いに行きたいな」と微笑んだ。