文学館で特別展を開催中の絵本作家 西巻 茅子さん 大町在住 75歳
今も続く表現の探求
○…絵本作家としてデビューして47年。うさぎの服の柄がくるくる変わる「わたしのワンピース」や主人公たろうの「もっと大きくなりたい」という気持ちを描いた「もしもぼくのせいがのびたら」などユーモア溢れる絵本を子どもたちの元に届けてきた。作品の世界が9月21日まで、鎌倉文学館で展示されている。「これだけ多くの作品があるのか、と自分でも驚いた。読者が支えてくれたおかげです」と目を細める。
○…東京都世田谷区出身。父親が画家だったこともあり、幼少期から絵に親しんでいた。東京藝術大学を卒業後は幼稚園で絵を教えたり、版画作品を制作したりしていた。そんな折、絵本専門出版社のこぐま社から一冊作らないか、と声をかけられた。「絵本について何も知らなかったけれど、これは一生の仕事になる、と感じた」と振り返る。ぬいぐるみの目に使われていたボタンが取れて冒険する「ボタンのくに」は、デビュー作ながら今でも子どもに愛されるロングセラーに。「多くの色を使ったのだけれど、子どもはいつの時代もこういうのが好きみたいね」とほほえむ。
○…「せっかく絵本なんだから、絵を主人公にしようと思って」と代表作である「わたしのワンピース」を制作。花畑に行くと花柄に、雨が降るとしずく柄にワンピースの模様が変わっていく展開に出版社からは「物語性が小さい」と書き直しを求められたことも。それでも「絵の変化こそが面白い」と信念を通した。その後も刺繍や油絵など多様な手法を取り入れてきた。「成功した手法をもう一度とは思わない。色々なことを試したくなっちゃうの」といたずらっぽく話す。
○…「ずっと憧れで、いつか住もうと思っていた」と鎌倉に越してきたのは20年ほど前。海岸など周辺を散歩することを楽しみにしているという。「読者に面白い、と思ってもらうには自分がリラックスして楽しまないと」と笑顔で語った。