県教育委員会はこのほど、鶴岡八幡宮内の県立近代美術館・鎌倉館の建物調査の結果を発表した。それによれば本館建物は現在の耐震基準を下回っているものの、地下遺構を損なわない補強が可能であることが明らかになった。同館は来年3月末に閉館予定で、建物の保全を求める声が市民などから上がっている。県教委は「保存・活用の可能性について今後協議を進める」とする。
県教委が1月23日に発表した調査結果では、同美術館の本館建物の現状について「現在の耐震基準を下回っており、部材の一部にも腐食や欠損が認められる」ものの「基礎部分のコンクリートや鉄骨等は建設当時の強度を保持している」とする。
その上で現在の耐震基準に適合させるために、補強材の交換や新設に加え、柱脚や地下梁の補強により、「地下遺構を損なわずに補強が可能」と結論付けている。また補強に必要な工事費を、概算で約2億1千万円と見込む。
県立近代美術館・鎌倉館は1951年、鶴岡八幡宮境内に建設された日本初の公立近代美術館。設計は建築家・坂倉準三が手がけ「戦後モダニズム建築の傑作」と高く評価されている。
しかし美術館が建つ鶴岡八幡宮境内は1967年に国の史跡に指定され、市教育委員会が策定した史跡の保存管理計画では「史跡の中では、宗教活動あるいは史跡にとって重要不可欠なもので、かつ、史跡にそぐうもの以外の現状変更は認めない」としている。
そのため県は、老朽化が顕著な同美術館を改修することは難しいと判断し、借地契約が満了となる2016年3月末で美術館を閉館する方針を示している。
借地契約では契約満了後は建物を解体し、更地にして鶴岡八幡宮に返還することになっている。そのため、建築関係団体や市民から、建物の保全を望む声が上がっており、昨年5〜6月に市内で実施された署名活動では、1万6千筆以上が集まった。
これを受け、県と鶴岡八幡宮は昨年夏から、建物の現状を把握するとともに保全が可能かの調査を行っていた。県は「調査結果を精査するとともに、借地契約満了後の建物の保存・活用の可能性等について引き続き、八幡宮と協議を進める」としている。
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