乙女が愛する人に思いを込めてチョコレートを贈る日、バレンタイン。そんなムードを盛り上げる企画が鎌倉文学館で明日1月31日から開催される。「愛は言葉だ!」と題したこの催し。文豪たちの愛にまつわる作品展示や、毎年恒例の「愛の言葉おみくじ」など、今回も見所が盛りだくさん。そこで愛について一家言を持つこのお二人に時空を超えて解説してもらった。
芥川龍之介(以下龍之介):
文学館のバレンタイン企画が今年も始まります。毎年恒例の愛の言葉おみくじには、晶子さんの「冬の夜の星君なりき一つをば云ふにはあらずことごとく皆」が使われていますね。これぼく好きなんです。
与謝野晶子(以下晶子):見るもの全てが「君」つまり私の夫の寛さんに見える、という心情を描いたものね。
ところであなたのおみくじには何て?
龍之介:「勿論昔から好きでした。今でも好きです」。かつて妻に書いたラブレターの一節なんです。
晶子:直球だけどなかなか素敵じゃないの。
龍之介:ありがとうございます。今回、展示室では晶子さんの草稿「花の氷」を見られるとか。どんな作品なんですか?
晶子:亡くなった最愛の夫を想って書いた、とっておきの作品よ。
龍之介:亡くなったご主人に宛てた作品って…バレンタインなのに切なすぎませんか。
晶子:良いじゃないの。愛には切なさがつきものよ。
龍之介:なるほど…。
晶子:夫を思う気持ちの昂ぶりを歌った「君知らで終りぬかかる悲みもかかる涙もかかる寒さも」もぜひ皆さんに見てもらいたいわ。
龍之介:ふんふん、あなたが逝ってしまって…涙を流しこんなにも寒い…ってこれまたなんと切ない!
晶子:だって夫と離れ離れになってしまった、忘れられない出来事ですもの。残さず書き留めておかないと。
龍之介:では、この「筆とりて木枯らしの夜も向ひ居き木枯らしの夜も今一人書く」はどんな心情だったのでしょうか。
晶子:それはね、夫とは大きな机で向かい合って仕事をしていたから、いないのが寂しくて仕方ない、残されて悲しい、という気持ちから読んだものね。
龍之介:身を切られるような悲しみが伝わってきます。
晶子:でもね、これだけ愛したから、大切だったから、失って寂しく感じるのよ。そんな夫に出会えて私の人生本当に良かった。
龍之介:晶子さん…。
晶子:ところで、そちらに展示してある龍之介くんの「しるこ」という原稿はどんな愛の物語なのかしら?
龍之介:いや、これは、ぼくのしるこへの情熱をつづったものでですね、これも一つの愛のかたちと言いますか。
晶子:「しるこも亦或は麻雀戯のやうに世界を風靡しないとも限らないのである」。ふーん…私の切ない歌に比べると随分軽くない?
龍之介:そこはスイーツ枠ということで何とかお許しを…。
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