「万灯みたままつり」が行われる鎌倉宮の宮司 長岡 仁志さん 逗子市在住 63歳
「生」に感謝する祈りを
○…東日本大震災被災者の慰霊を目的に2011年から行なわれている鎌倉宮の「万灯みたままつり」が今年も行われる。昨年12月の宮司就任後、初めて迎える同祭事。「犠牲者のためというのはもちろんですが、鎌倉は古来より合戦や災害があり多くの亡骸を越えてきた街。そういった先人たちへの弔いと、今生きていることに感謝する機会になれば」と静かに話す。
○…3歳のときに鎌倉に移り二階堂で少年時代を過ごした。高校卒業後は工学系の大学への進学を目指すも受験に失敗。父親の勧めで受けた国学院大学の神道学科に入学したが「宗教には全く興味がなかった」という。しかし元々の歴史好きが高じ、宗教の比較に熱中した。卒業後は学芸員を希望したが、なかなか就職が決まらない。するといとこから鎌倉宮を紹介され神職として働くことになった。
○…「『とりあえず』はじめた仕事でしたが、想像以上に充実していて、すぐにそんな考えはなくなりました」と振り返る。同宮にも多くの祭事があり、毎年同じ日、同じ時間に粛々と行なわれていく。「若い頃はそのくり返しに意味があるのか不思議に思っていました」という。しかしその思いは年を重ねるごとに変化した。「また今年も無事に開催できるのは私たちが生きている証だ、と気づきました。まずは生きていることに感謝するため、祭はあるんです」。明治天皇の命で1869年に創建された同宮。「新しい時代のために建てられたお社としての心を伝えていきたい」と語る。
○…無類の映画好きでお気に入りの一本は『タイタニック』。「主人公がラストで首飾りを海に投げ入れるのは、恋人の分も人生を全うした証として海に返したのでは。物にも魂が宿るとする日本人と違いますね」と宗教者ならではの解釈を展開する。他にもスキーやランニングなど活発に趣味を楽しんできた。「やりたいことはやらないと」といたずらっぽい笑みを見せた。