鎌倉版 掲載号:2015年9月11日号 エリアトップへ

ノンフィクション作品「115通の恋文」を上梓した 稲垣 麻由美さん 常盤在住 46歳

掲載号:2015年9月11日号

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恋文がつないだ家族の絆

 ○…「戦争とは何か、家族の絆とは何か、7年がかりで教えてもらった気がします」。このほど上梓した『115通の恋文』は、中国の戦地にいる夫へ妻が送った手紙をまとめたもの。知人の渡辺喜久代さん(七里ガ浜在住)から保管していた手紙を見せられたことがきっかけだった。「繰り返し綴られる夫を案ずる妻の愛情、寂しさから時に乱れる字。この物語を世に出さなければ、という使命感にかられて必死で執筆しました」とほほえむ。

 ○…神戸出身。25歳で結婚し、夫の転勤で福岡へ。子育て支援センターの紹介で情報誌の制作に関わるようになった。「始めは友だち作りのため」だったが「もしかしたら文章を書くことが自分に合っているかもしれない」と考えるようになったという。関東に移り、17年前に鎌倉へ越した後、地元出版社で働き始めた。

 ○…渡辺さんとは仕事を通じて知り合い、退職後も親交が続いた。7年前、見せられたのが父・山田藤栄さんに母・静枝さんが送った115通の手紙だった。「これは大変なものと出会ってしまった、というのが正直な気持ちでした」と振り返る。取材を始めたものの「学生時代から歴史が苦手で難航しました」と苦笑い。それでも藤栄さんの軍歴証明書と史実を一つひとつ照らし合わせ、時には当時の部下に会いに行くなどし、手紙の背景を詳らかにしていった。「100通を越える手紙を送った静枝さんの情熱も、藤栄さんの壮絶な過去も、全てに圧倒されました。戦争を知らない私だからこそ、このことを後世に伝えていかなくてはいけない」と真っ直ぐに前を見つめる。

 ○…現在は書籍のプロデュースなどに携わっている。「一冊書き上げたことで燃え尽きてしまった」と笑い、次回作の予定はないという。「私が戦争について向き合うことができたように、この本で多くの人が社会や歴史を見つめ直す機会になれば」と穏やかに語った。

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