極楽寺在住の写真家・竹沢うるまさん(37歳)が今年4月、第3回日経ナショナルジオグラフィック写真賞2014でグランプリを受賞した。アメリカとの国交正常化に向けた交渉が始まるなど、歴史的転換期を迎えているキューバの姿を収めた『BUENA VISTA』を8月に刊行。都内で開催されたトークイベントは立ち見が出るほどの盛況ぶりで、現在最も注目されている写真家の1人だ。
沖縄の海が原点
竹沢さんが写真に目覚めたのは同志社大学1年生の時。旅行で訪れた沖縄の海の美しさに感動し、それを残したいと撮り始めたのがきっかけだ。
その後、長期休暇になるたびに、テントとカメラを持って沖縄へ通うように。就職活動時にダイビング専門誌に作品20点と履歴書を送って採用され、スタッフフォトグラファーとして3年間働いた。2004年に独立し、水中の世界を撮り続けた。転機は32歳の時。「10年間、クライアントのために写真を撮ってきた。先のことも考え、新しい世界を経験したかった」と旅に出ることを決めた。
カメラ携え世界巡る
2010年に日本を出発すると、北米からアメリカ大陸を縦断。アフリカ大陸を北上し、ユーラシア大陸を東へと進んだ。辺境の地や珍しい祭りがあればどこへでも行ったという。エチオピア南部で撮影中に銃口を向けられ、サハラ砂漠では遊牧民と生活を共にしたことも。帰国したのは3年後の12年。1021日間かけて巡ったのは103の国と地域で、撮影した写真は35万枚にのぼる。
そのうちの1枚、インド北部の村で撮影した「スピティ谷の女」が今年4月、国際的に活躍するドキュメンタリー写真家の発掘を目指す第3回日経ナショナルジオグラフィック写真賞2014のグランプリを受賞。「秘境と呼ばれる伝統的な社会に生きる女性を印象的な光と影で表現している」などと評価された。
撮影するときは「自分の頭で世界を狭めたくないのでなるべく考えずに撮っている」と話す。水面が穏やかであれば木の葉1枚が落ちただけでも波紋が広がる。そんなふうに心が動いたとき、シャッターを押すのだという。
キューバの「今」写す
そんな竹沢さんが「もっとも独特な国」と表現するキューバの姿を収めた写真集『BUENA VISTA』が8月、刊行された。1959年の革命以来となるアメリカとの国交正常化に向け転換期にある同国。首都ハバナで感じたのは他の都市とは正反対の安心感だった。「経済制裁などでモノが入ってこないため、人々は半世紀にわたって今あるものを手入れし、維持してきた。そうした積み重ねによって生まれる『生活感』が満ちていた」。
そこから竹沢さんは「音」に意識を向け、写真に収める。「街を歩いていると、生活感が『音』として現れていた。それぞれの写真からキューバの姿を伝えられれば」と話す。
鎌倉での生活
独立した際に鎌倉に居を構えた。「休みのときはよく近所を散歩しますよ」と落ち着く環境が気に入っているという。
現在は「祈り」をテーマに撮影を続けている。「旅に出るより旅を終えることの方が数倍難しく、このまま帰っていいのか煩悶した。そんなとき、チベット文化圏の人々が祈る姿を見て、次は人の心の深さを撮ろう、そう思ったんです」。
竹沢さんの最新情報はホームページ【URL】uruma-photo.com/で。
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