鎌倉市川喜多映画記念館(市内雪ノ下)は3月25日(金)から27日(日)まで、鶴岡慧子さん(27)と竹内里紗さん(24)という新進気鋭の若手監督の作品を特集上映する。ともに立教大学現代心理学部映像身体学科出身で、同じ女性を主演に起用するなど共通点の多い2人だが、「表現する世界観は全く違う」と同館の馬場祐輔さん。上映を前に、2人に作品について話を聞いた。
「帰る話」を2作で表現
上映作品の一つ「くじらのまち」は、鶴岡さんが4年前、大学の卒業制作として撮りはじめた。失踪した兄を探しに高校生3人が上京する、というストーリーだが、東京を舞台に選んだのは祖母の家が山手線沿線にあったからだ。「田舎に帰る、というのは私にとって都会に行くということ。その度に感じていた東京の中のノスタルジックな雰囲気を作品に表したかった」と話す。
東京芸術大学大学院へ進学後に同作品をぴあフィルムフェスティバルに応募し、グランプリとジェムストーン賞をW受賞。「この作品があったから、映像で生きていこうと前を向くことができた」という。
一方、「過ぐる日のやまねこ」は、劇場公開を意識して制作に取り掛かった。前作とは逆に東京から長野へ向かうストーリーとなっているが、両作品に共通しているのは「どこかへ帰る話」だということ。「街や森の中に入って行ってもどこか別の世界にたどり着くような、そんなイメージを表現していきたい」。
今後について、鶴岡さんは「1年に1本作って、撮り続けるのが目標」と熱い眼差しで語る。
感情の視覚化に挑戦
デビュー作の「みちていく」が上映される竹内さんが本格的に映画制作に打ち込むきっかけとなったのが、前述の鶴岡さんの存在だった。2年生のとき、同じ映画サークルに所属していた鶴岡さんが「くじらのまち」の助監督としてオファー。「はじめて関わった長編。全てが刺激的だった」と振り返る。こうした経験から、自身も卒業制作でメガホンをとった。
「みちていく」は女子高の陸上部を舞台に、エース・みちると部長・新田の2人を中心にした少女たちの群像劇。みちる役には「くじらのまち」でも主演を務めた飛田桃子さんを、新田役には山田由梨さんを起用した。2人とは1年のころからサークル活動を共にしており「知り尽くしている2人の良さをどう引き出すか、それがシナリオの肝でした」と竹内さんは話す。
他人に噛んでもらうことで、自分の存在を確認しようとするみちる。このようなキャラクターの印象的な行動について竹内さんは、「感情を視覚化する表現を、意識的にちりばめた」という。
同作はその後、うえだ城下町映画祭で大賞を獲得するなど評価を受け、全国の劇場で公開され話題となっている。次第に「まだ映画を撮っていたい」との思いが強くなり、東京芸術大学院へ進学。現在は大学院の新しい仲間と新作に取り掛かりながら、映像の道を突き進む決心を固めている。
同館の馬場さんは「鶴岡さんは抽象的なイメージをそのまま画面に表現するタイプで、竹内さんは体験を生かして作るタイプ。同じ女子高生を描いているのに、アプローチが違うのが面白い点です」と2人について話している。
上映は午前11時から。一般1千円、小中学生500円。3日目は「くじらのまち」の上映はないが、アフタートークを予定。予約や問合せは【電話】0467・23・2500同館へ。
鎌倉版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|