「現代の名工」に選ばれた 小宮 三智男さん 三菱プレシジョン勤務 61歳
たゆまぬ努力で名工に
○…厚生労働省が卓越した技術者を表彰する「現代の名工」にこのほど選ばれた。上町屋にある三菱プレシジョン株式会社鎌倉事業所で主にロケットや人工衛星に搭載する精密部品加工に従事。その優れた技術で日本の航空宇宙産業を支えてきたことが評価された。「4年前に職場から名工が出たので、しばらくはないと思っていた。知らせを聞いた時は嬉しかった」と笑顔で語る。
○…横須賀市で生まれ育ち、子どもの頃から機械いじりが好きだった。ラジオなどを分解して遊んでいたほか竹を切って弓矢を作るなど、この頃から「ないものは自分で作る」姿勢を持っていたようだ。工業高校へ進学後、「空や宇宙を飛ぶものに関わりたい」と今の会社に入った。
○…入社以来、ほぼ一貫して旋盤加工に携わる。対象物を回転させ、刃を当てて削ることで形を整えるこの方法。最近ではある程度まで自動でできるようになったが、重要な部品については「匠の技」が必要不可欠だという。最近製作したジャイロ部品はヒトでいう三半規管の機能を持ち、機体が飛んでいる際の姿勢制御に大きな役割を果たす。粘度のある金属をシャープペンシルの芯ほどの太さまで細くしてバネ状にするため、プラスマイナス0・005㎜の精度が求められた。切削工具や治具を独自に考案するなど、試行錯誤を重ねてこれを実現。熟練技能者の中でも「小宮さんにしかできない」と言わしめる高い技術はこの探究心で培った。「私たちの仕事に教科書はない。いかに図面通りに仕上げるかを考えるのが面白い」。
○…妻と2人の子どもがおり、1人はすでに独立した。今も横須賀に住み、地元町内会では30年にわたって神輿会の会長を務める。「神輿も仕事も後進を育てないと。まだまだやることがいっぱいです」。次世代への伝承という大仕事も、そのたゆまぬ努力と探究心できっちり仕上げるつもりだ。