写真集「江ノ電305」を発刊した 野口 雅章さん 極楽寺在住 59歳
江ノ電と歩んだ軌跡、一冊に
○…現在運行する江ノ電車両の中で、最も古い300形305(355)。木張りの床がレトロな雰囲気を醸し出し、ファンから「サンゴー」の愛称で親しまれている。この車両が「還暦」を迎えることを記念して写真集を出版した。「専門用語はなるべく使わなかった。マニアだけでなくたくさんの人に楽しんでもらいたいから」
○…坂ノ下生まれ。幼い頃から江ノ電は身近な存在で「大きな電車が街中を走る姿に興奮した」と振り返る。10歳の時、初めて江ノ電を撮影。茅ヶ崎高校に進学後は写真部に入り、本格的にカメラを学んだ。「60年間改良を重ねながら走り続けてきた305。海や山、花、天候が違うだけで車両の表情も変わる。私と同い年ということもあり愛着がある」と魅力を語る。休日には100枚以上を撮影。「その時、その場所にしかないシャッターチャンスにいつも喜びを感じる」
○…読書も好きで「活字の魅力を伝えたい」と専修大学文学部を卒業後、教師の道に進んだ。初めは藤沢工業高校に国語教諭として赴任。「当時”ツッパリ”も多く手を焼いた」。ある日、そうした男子生徒の一人が書いた字を見て「お前の字かわいいな」と何気なくほめたところ、翌日から反抗しなくなくなったという。話を聞くと「『俺ほめられたことなかったから』って」。以降、生徒と接する際は「心の声を丁寧に聞くこと」を心掛けるように。現在は逗子高校の非常勤講師として教鞭を執る。
○…部屋の中には鉄道雑誌や模型が所狭しと並ぶ。江ノ電の案内人としてNHKのテレビ番組『ブラタモリ』に出演した過去も。「時代と共に変化する沿線風景。飽きることはない。今後もお気に入りの一枚を撮るためにシャッターを切る」