市内今泉台、閑静な住宅街の一角にちょっと不思議な場所がある。庭に所狭しと並ぶのは、奇抜なデザインと色彩豊かな陶芸作品の数々。40年以上にわたって創作を続ける、城後了太さん(西鎌倉在住・85歳)のアトリエだ。古今東西の芸術作品や文化に触れ、多様な人生経験から浮かぶ心象を、陶芸や木彫、油彩、書まで、様々な手法で表現してきた。
未完の美貫く
福岡県出身の城後さん。父は木彫、母は織物や染色の専門家で、幼い頃から様々な芸術作品や文学に触れて育った。
まず目指したのは小説家。「フィクションを書くのではなく、自分の体験に基づくものを書きたかった」と30を超える職業を経験し、詩や短歌なども書き溜めた。
しかし、40歳の時に始めたのは陶芸だった。「文章はどうしても解釈されてしまう。自分自身も分からないものを作りたかった」という。
その作品はユニークそのものだ。「中学生のころからずっと研究している」という縄文土器を彷彿とさせるものもあれば、屋久島の縄文杉の生命力にインスピレーションを得た「古樹」というシリーズでは、樹の幹とも人間の臓器の一部とも見て取れるような作品群を生み出した。
すぐさま前衛や奇想といった言葉が思い浮かぶが、城後さん自身はそうした「理解」や「解釈」から距離を置く。
「『何を表現しているのか』を多くの人が知りたがるけれど、私の作品は私自身が何を作っているのか分からない」と冗談めかして言う。
行っているのは、ただ土や筆に向かい、頭に浮かぶイメージを形にしていく作業。「作っているそばからどんどん変化していきます。何が出来上がるか、分からない。それに必ず作品は未完成のままにします。だから私も含めて誰も理解はできない」と笑う。
尽きぬ表現への情熱
そんな孤高の創作活動を続けてきた城後さんにも、60歳を目前に転機が訪れる。京都でファッション雑貨会社を営む河野卓男さんが作品にほれ込み、支援を申し出たのだ。河野さんのサポートを得てヨーロッパやアメリカでも創作と発表に打ち込んだ城後さん。7年前、今泉台にアトリエを構え、西鎌倉に住む。
現在は「集大成になると思う」という一連の作品を制作中だ。能や歌舞伎用の衣装など、色鮮やかな古い衣服をコラージュのように組み合わせたもので、80代を迎えた今でも「制作に没頭して徹夜してしまうこともしばしば。作りたいものは無限にある」と、情熱は衰えることを知らない。
これまで作品はほとんど売ったことがない、というが「鎌倉で作品の管理や展示をしてくれる人がいれば」と話す。
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